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2025.01.31

WING

NAA田村社長、新中期計画で投資支える収益性重視

 新たな成田へ向けた現計画、同様の方向性で充実化

 成田国際空港会社(NAA)の田村明比古社長は1月30日の会見で、来年度からスタートすることになる新中期経営計画の方向性について、本格化する機能強化に向けて「会社として、大きな投資を支えていく収益力というのを高めていかなければいけない」と述べ、収益強化の施策に重点を置く考えを示した。また2022-24年度の現中期計画は、2030年代の成田空港の姿を見据えて打ち出したものであり、その成果を踏まえた上でさらに内容を充実させたかたちで新中期計画を示していくとした。
 田村社長は今まさに、現中期計画で掲げた目標の達成度を精査しつつ、新たな計画について検討を進めているところだと説明した。現中期計画については、作成した経緯が「2030年に成田空港がどういう空港でありたいかを示し、それに向けてまず最初のステップとしてつくった」もので、今見直しても3本目滑走路の本格運用開始に向けた目標は「大きく変更する必要はない」という。計画の期間も「多分3年でつくるだろう」と述べ、目標の大枠を維持しつつ、内容の充実化を図っていく考え。
 その充実化施策の1つが収益力強化であり、今後は「しばらく大きな投資を続けなければいけないフェーズ。もちろん国などの支援を得ながら、会社として収益力を高めていく」と話した。

※この記事の概要
・アジア-北米間需要勝ち取る機能強化
 今の設備は「竹槍で戦うようなもの」

 田村社長は、成田にとって重要なアジア-北米間の需要を取りこぼさないためにも、さらなる機能強化、新しい成田空港構想を着実に進めて、近隣アジア諸国との空港間競争を勝ち上がらなければいけないことを改めて強調した。アジアと北米をつなぐ路線は、人流・物流とも特に需要が太く、近隣の仁川や、香港、シンガポールなどとの激しい競争にさらされている。この大事なマーケットでライバル空港と戦っていくためにも空港の刷新が重要であり、常に使いやすい空港であることを追求していかなくてはいけない。現在の成田空港では、武器となる施設が70年代のもの。これは「航空の世界では、竹槍で戦っているような感じ」であり、これを近代戦を戦い抜くために武器を新しくしなければいけないという。
 さらに日本の場合は、「日本を目的地とする人流が増えていることも受け止めなければいけない」とし、成田空港としては「できる限り地方都市へ送り込む機能も果たすべき」だとして、豊富な国内線ネットワークを持つことも重要だとした。
 田村社長は、日本全体のマーケット動向を考えれば、人口減少時代を迎えて日本人の国内線需要が頭打ちになることが予測されるものの、国際拠点空港として「国際線を一定の頻度で維持しようと思えば、インバウンドを日本全国へ送れるようにしなければいけない」という。そのため「国際拠点空港における国内線の重要性はますます高まっていく」考えであり、今の成田における国内線のネットワークは「まだまだ足りない」と見て、さらに国内線のネットワークを拡充する余地が様々あるとした。

 発着34万回へ新規・増便に十分なサービス
 地域との発展で従業員が快適に住める街へ

 田村社長は去る1月24日の四者協議会で、25年冬ダイヤから年間発着枠の34万回化を確認したことについて、今後NAAでは様々な国のエアラインからあがっている新規就航や増便の需要に対し、しっかりとサービスが供給できる体制を確保していくことが重要だとした。特に人材確保の対応は、需要の増加に応じてさらに進めていく。「ビジネスチャンスを逃さないようにしたい」と話した。
 また千葉県と共に空港内へ設置するエアポートシティデザインセンターは、新しい成田空港構想の「取りまとめ2.0」で重要な4つの柱の1つが地域と空港が一体的・持続的に発展していくことであり、それを実現するための重要な組織になるとした。空港の目線で見れば、この新組織の検討によって、周辺に航空と相性のよい産業が立地していくことになり、航空貨物などの需要を増やし、ビジネスでの往来も増えることになる。周辺の観光を進行し、旅客の需要の増大にもつながる。さらに、地域の産品を世界に発信していくチャンスにもなるとして、期待を寄せる。

 特に今後、空港が拡大していくことでより多くの従業員が必要になる。そうした空港スタッフが「安心して快適に家族と一緒に住める、そういう環境を確保することは、空港会社としてある意味責務のようなもの」だと述べて、周辺まちづくりの方向性を示す新組織によって「空港にとっても地域にとっても様々な好循環を生む取組みになる」ため、十分に連携を取って「極めて前向きに大きな期待を持って取り組んでいきたい」考えだとした。

※写真=会見で質問に答える田村社長