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2025.02.14

WING

第218回「日本が危ない」本気でネットワーク強靭化を考えろ

ねじれ国会に忍び寄る魔手

標的は社会必須のインフラ

 日本においては少数与党で石破茂政権は国会運営に苦慮しているが、似たような状況にあるのが台湾だ。頼清徳政権の与党である民進党は立法院(一院制の国会)で51議席と過半数(113)に達していないため、すべての法案処理が野党ペースで進んでいる。そうした政情不安に付け込んでいるのが中国で、あの手この手で揺さぶりをかけている。その一つが海底ケーブルの切断だ。
 海の底を通る海底ケーブルは世界で400本以上にのぼり、総延長は130万キロとも140万キロとも言われている。地球30周分を超えている。国内各地にあるデータセンターから陸上ケーブルを通って海沿いの陸揚局と呼ばれる中継所に到達し、深いところは海底をはわせる。海溝も通るため水深は最大で約8000メートルに達することもある。日本と米国(西海岸)間は約8000キロであり、最低でも中継器は80台から100台は必要だ。敷設するのは電話会社が中心だったが、最近はグーグルやアマゾンなどの巨大IT企業が増えている。
 海底ケーブルは水深によって太さは異なる。水深が浅い場所では漁網や錨などからケーブルを守るため太く強度がある外装となっている。対照的に深い海ではケーブルが重すぎると重力の重さに耐えられなくなるため、「無外装ケーブル」と呼ばれる細いタイプのケーブルが使われる。
 世界を結ぶネットワークには海底ケーブルと衛星通信があるが、近年は膨大なデータ量とスピードが重要となっており、国際通信の約99%を海底ケーブルが占めている。海底ケーブルが切断されれば日常生活に支障が出る。なかでも金融市場取引においては超音速取引が行われているため、海底ケーブルの専用線が用いられている。そのケーブルが損傷すると金融取引においても甚大な影響を与えることになる。

ネットワークが人質に
中国お家芸のグレーゾーン

 ロシアはウクライナ戦争で有利に立つため海底ケーブルに目を付けた。バルト海では海底ケーブルが損傷する事案が相次いでいる。昨年12月25日にはフィンランドとエストニア、ドイツを結ぶ海底ケーブル4本が損傷した。ロシアが西側諸国の制裁を回避するために使用しているとされる「影の艦隊」による犯行との疑いが強いとみられている。

海底ケーブルが伸びていることを知らせる標識。意図的に切断しようとする攻撃に備えるべきだ

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