WING
航空機被雷回避判断をAI支援、三菱重工が開発した「Lilac」とは

予測精度95%、既存設備活用でユーザーは別途設備必要なし
航空機のオペレーションにとって、被雷は最大の難敵の一つだ。雷と聞けば、夏場の積乱雲やゲリラ豪雨による夏季雷を想起する人が多いことだろう。ところが、今の季節、つまり冬場の冬季雷のエネルギーは夏季雷と比較して、数倍大きなエネルギーを有しているのだ。とりわけ冬の日本海沿岸地域は、世界有数の雷発生地帯としてパイロットたちには恐れられている。
航空機が被雷するケースの多くは、自然に発生する自然雷よりもむしろ飛行中の航空機自身がトリガーとなる、いわゆる誘発雷が大半を占めている。帯電した雲に航空機が接近することで雷が発生する誘発雷は、飛行中の航空機にとって大きな脅威だ。
日本国内における航空機の被雷件数は年間数百件にも及んでいるとされる。航空機が被雷すれば、遅延・欠航便が複数発生するほか、場合によっては機体の大規模修理を余儀なくされるなど、巨額の経済損失も発生してしまう。
実際、記憶に新しいところでは、新潟空港を拠点に運航を開始したトキエアだ。トキエアの機体が飛行中に被雷し、大修理を必要とする損傷を被り、運休が発生。トキエアは2機しか機材を保有しておらず、残る1機も防氷装置にトラブルが発生し、結果として一定期間、全便欠航という事態に陥ってしまった。
エアラインに頭の痛い被雷問題のソリューションとして、三菱重工業が開発したのが、被雷回避判断支援サービス「Lilac」だ。三菱重工業は日本航空(JAL)と「Lilac」の使用契約を締結し、昨年4月から日本国内の空港に導入を進めることになった。
※画像=被雷回避判断支援サービス「Lilac」(ライラック)のイメージ(提供:三菱重工業)