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「Z-Leg」、駅と空繋ぐサービスがいよいよ本格化へ

昨年11月に盛岡駅構内を活用し実証も
川崎重工業が2023年3月にローンチしたヘリコプター手配サービス「Z-Leg」(ゼータ・レグ)。いつでも、どこでもヘリコプターを呼び、移動することができる―――。そんな世界を描き、川崎重工業の社内公募制度から生まれた新たなビジネスだ。ドクターヘリ、消防防災、警察、自衛隊などで大活躍するヘリコプターだが、一方で平時の旅客輸送ツールとして、果たして十分有効活用することができていたかといえば、大きな疑問符がつくところだろう。それはオペレーターの機体稼働率をみても、明らかだ。そうしたなか川崎重工業が開発した「Z-Leg」は、そんなヘリコプターの活用の幅をこれまで以上に広げるサービスとして、注目されている。
この「Z-Leg」は既存のヘリコプターのみならず、もうまもなく段階的に社会実装が進んでいく空飛ぶクルマ(eVTOL)という新たなモビリティにも応用可能なサービスだ。昨年11月には、岩手県盛岡駅で東日本旅客鉄道(JR東日本)と共同で、将来の空飛ぶクルマを活用したサービス展開を見越した実証実験を実施した。
「Z-Leg」の開発者である川崎重工業航空宇宙システムカンパニー新事業戦略総括部新事業推進部基幹職の堀井知弘氏に話を聞いた。ちなみに「Z-Leg」を運営しているのは、グループ傘下の川重岐阜サービス。堀井氏は同社のエアトランスファ推進部部長も兼任しており、旅行業免許を取得している。
川崎重工業がJR東日本らと実施した盛岡駅における実証は、かなりチャレンジングなものだった。最大のポイントは場外離着陸場を駅構内に設置したことだ。この場外離着陸場は、JR貨物の車操場を活用し、川崎重工業が設置したもの。川崎重工業とJR東日本は2023年12月に、世界でも屈指の乗降客数を誇る新宿駅に隣接した新宿ミライナタワーの屋上ヘリポートを活用した実証実験を実施したが、これは「駅構外」だ。盛岡駅における実証は「駅構内」での実証であり、旅客は改札を出ずに、そのまま新幹線からヘリコプターへと乗り換えるなど、ヘリコプター輸送のあらたな可能性を示した。
JR東日本、日本総合研究所、そしてアーサー・ディ・リトル・ジャパンが事務局を務め、川崎重工業も加盟する「WaaS共創コンソーシアム」(WCC)のワーキンググループの一つである「駅と空を繋ぐワーキンググループ」は、今回の成果も踏まえ、事業化に向けて動き出していくことを決めたという。
「今回ワーキンググループに参加した会社とともに、これからは民・民の契約を締結し、事業化に向けて本格化させていく」とのことで、駅と空を繋ぐ移動手段が、もう間もなく社会実装されていくことになりそうだ。
川崎重工業としても「今回の実証では、我々は盛岡駅特有のデータを取得したほか、どの駅でも共通性がある知見・データを得ることができた。今回の成果を軸に、JR東日本の他の駅を中心とした事業展開を進めていくことを考えている」ことを明かしたほか、「今回の実績をもって、JR貨物を含めたJR各社などにも売り込んでいこうと考えている」とし、駅という拠点からの二次交通システムとして、ヘリコプターの活用可能性を広げていく考えを明かした。
※この記事の概要
・現地滞在をより長く
陸路で設定できないツアーを企画可能に
・見えてきた課題、「売り手」に分かりやすく
オンデマンド予約にも対応へ、アプリは年内ローンチ
・駅構内利用で様々なデータと知見獲得
鉄道運行を決して妨げない入念な準備・体制構築
・場外離着陸場、12月までに約90カ所
更なる拡大へ観光庁プロジェクトに注目
・海外富裕層へアプローチ強化
ビジネスジェットと連携も など