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2019.01.28

WING

台風被害の関空、わずか17日で1期島浸水から復旧

旅客前年超えまで回復も、被害額は99億円見込み

 昨年9月4日、台風21号が日本列島に上陸し、近畿地方を中心に猛威を振るったことは記憶に新しい。関西国際空港では、高波と暴風の影響で空港島1期島が浸水。一部施設も破損し、24時間空港で停電が発生するなどの影響で、一時運用停止となった。当初、復旧まで2ヵ月以上は必要とされたものの、復旧にかける現場の力や空港間の協力によって、被災からわずか17日間で第1旅客ターミナルの全面運用再開を果たすことができた。さらに、被災によって旅客の減少も懸念されたが、運用を停止していた9月こそ旅客がほぼ半減となるも、翌10月にはすでに8月の水準まで回復。以降は前年比3%増までに旅客が増え、2018年冬スケジュールでは夏冬通じて過去最高の便数を計画して、壊滅的ともいえる被害を完全に乗り越えることができた。台風をはじめとする自然災害は、今後さらに発生のリスクが高まるとされ、空港などの重要インフラでは、防災・減災の対策が不可欠となっている。関空の被害は、いくつかの課題を示しつつ、回復への道筋も示した事例だ。関空の早期復旧を振り返っていく。
 関西エアポートは1月25日に記者クラブの取材に応じ、関空で大きな被害を受けた貨物地区や護岸工事の様子などを公開した。台風21号で大きな被害を受けたのは、ほとんどが1期島の施設。後発の2期島に比べて最大で6メートル地盤が低くなっていて、風で巻き上げられた高波が1期島へ入り込んだ。また集中豪雨対策として設置していた排水ポンプが機能せず、海水が逆流してきたこともあって、滑走路、駐機場含めほぼ全域で浸水した。最大で水深が110センチに達したと見られ、浸水量は約270万立方メートルと推定される。関西エアポートが示す台風21号の被害額は約99億円の見込み。そのうち約35億円は、施設などにかかる費用で、残り64億円が旅客や就航便などに関する機会の損失としている。
 被災状況については、ターミナル地区では浸水によって、電気設備、空調、旅客・貨物取扱設備、防災設備などが損傷。ターミナル中央から北側を中心に停電が発生した。1期島南に位置する貨物地区の浸水は、水深約70センチにまで達した。貨物上屋はほぼ全棟で電気や空調などが使用不可となって、上屋内の貨物にも浸水による被害が発生した。給油地区では、埋設配管によるハイドランド式でエプロン地区へ燃料を送っている。浸水によって、タンク底板に錆が発生し、エプロンtくのハイドランドピットでは、緊急停止装置の倒壊などがあった。さらに関空の被災を追い打ちしたのが、連絡橋へのタンカーの衝突だ。強風にあおられたタンカーが、関空唯一の陸路となっている連絡橋へ衝突したことで、車両や鉄道の通行が停止した。これで島内に取り残された旅客・従業員合わせて約8000人が滞留することとなった。

 

タンカー衝突の連絡橋、完全復旧はGWごろに
滞留者8000人、普段乗り入れないバス会社協力

 

※写真1=台風被害のあった9月こそ旅客は落ち込んだが、現在はすっかり需要が戻った

※写真2=浸水によって大きな被害を受けた貨物地区。約70センチも水が溜まった

※写真3=上屋壁面に残る浸水の跡

※写真4=タンカー衝突により、破損した橋桁が撤去された連絡橋。完全復旧はGWごろを見込む