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2019.02.21

WING

世界で活躍する輸送艦「おおすみ」内部公開

多発する自然災害、大量の物資・人員を輸送

 海上自衛隊第1輸送隊の輸送艦「おおすみ」は、海上輸送を主任務としているが、とくに近年では日本周辺で多発する自然災害などの影響で、救援物資輸送を始め、医療支援や入浴支援などを行い、活躍する場面が多い。台風や地震などで厳しい環境に置かれる被災地にとって、多量の救援物資や人道支援を行う人員を運搬する輸送艦の存在は大変心強いものだ。このほど、「おおすみ」を取材する機会を得たので、優れた設備などを紹介したい。
 「おおすみ」は1998(平成10)年3月に就役し、基準排水量は8900トン、全長が178メートルもの規模を持つ輸送艦だ。ディーゼルエンジン2機を搭載した2軸で、出力が2万6400馬力、速力が22ノットとなっていて、乗員146人が運航する。長距離航続の性能に優れ、燃料を満載した状態では地球を半周することができるという。さらに、「しもきた」「くにさき」と続く、おおすみ型輸送艦の大きな特徴の1つといえるのが、輸送用エアクッション艇(LCAC)を2艇搭載していること。陸上自衛隊の1個中隊を乗せ、南西地域を主とした島しょ防衛など、水陸両用作戦にも対応する。
 陸自隊員や装備品の車両などを運搬することが主任務であるため、1隻当たりの搭載量はかなりのものだ。船体最上の第1甲板は、後部の飛行甲板と一体になった全通式で、外観上の大きな特徴となっている。第1甲板だけでも約4トンの大型車両なら38台、約2トンの中型なら64両、小型の車両なら128台の搭載が可能だという。さらに飛行甲板では、2機のCH-47が運用可能で、置くだけならば6機を搭載できるとのこと。また同型の輸送艦も含め、過去の演習ではオスプレイの発着も行っていて、運用の幅は広いものとなっている。
 第1甲板の第1エレベーターから艦内の第4甲板へ移動する。この第1エレベーターの耐荷重は20トンで、後部の第2エレベーターは15トン。車両や翼をたたんだ回転翼機を置いて移動させることができる。第4甲板は艦内ながら、広々としたスペース。ここには戦車も積むことができるということで、90式戦車ならば18両載せることが可能だという。また大型車両になると27両、中型なら37両、小型なら88両のキャパシティを持つ。戦車を含む車両を第4甲板へ載せるときは、主に船体前部両舷のサイドランプから行うことになる。

 

※写真1=海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」

※写真2=写真左は艦橋から見た第1甲板。中央の第1エレベーターは最大20トンまで載せることができる。写真右は船体後部の飛行甲板。第1甲板と飛行甲板はフラットな全通式となっている

※写真3=左のデッキクレーンは最大15トンまで吊り下げることができる。右の20ミリ機関砲CIWSは「おおすみ」が備える唯一の武器

 

上陸作戦必須のLCAC、PTM使用で最大203人搭載

※写真4=第1エレベーターから艦内の第4甲板へ。ここには90式戦車を18両積むことができる

※写真5=「おおすみ」搭載のLCAC。右舷キャビンから操縦席へ入るときには、ステップを登らなくてはいけない

 

赤い座席は1佐艦長席、医務室では高度な手術も

※写真6=写真上部は艦橋の艦長席と操舵席。下部は操縦室で左の写真がエンジンと発電機を管理し、右の写真が船体のダメージコントロールを行う

※写真7=医務室には簡易ベッドを備えるが、本格的な手術は写真下の手術室で行う

※写真8=陸自隊員居住区は3段ベッドとなっている