「チームカナダ」5州が考える新しい旅のスタイルとは?
オンタリオ州
三密を避けた湖畔の別荘に滞在
食や健康、サスティナビリティーを意識した旅を
オンタリオ州には自然豊かな州立公園や国立公園が多く、湖が点在する。湖畔沿いには一棟貸しの別荘がたくさんあるので、三密を避け、プライベート感のある空間でゆっくりとカナダ人のように滞在するなど、新しい形の旅をオンタリオ州で体験して欲しい。
またオンタリオはカリナリー・ツーリズムが盛ん。食べることを楽しみながら、食を通じてその土地を深く知ることができる。現地でどうやって育ったのか、誰がどのように料理して、地元の人たちがどんな風に楽しんで味わっているのか。また食と観光がどのようにしてビジネスとして成り立っているのか、もっとたくさんの人にオンタリオの食の魅力を知ってもらい、オンタリオのカリナリー・ツーリズムを楽しんで頂けたらと思っている。
健康を意識するなら、初心者でも参加できるカヌーなどのアウトドアスポーツが盛んだし、カリナリー・ツーリズムの関連なら、地産地消を推進しているレストランやスイーツショップで健康を意識しながら食が楽しめる観光もアピールしていきたい。
もちろんオンタリオと言えば、ナイアガラは外せない。今年の夏にオープンしたナイアガラパークス・パワーステーション(ナイアガラ水力発電所)は、ナイアガラの水力を使って電気を作っていた歴史を今に伝える新しい観光アトラクション。またイルミネーションで使用しているLEDライトは、日本のスタンレー電気社の製品を使っている。日本の企業のサスティナブルな製品がナイアガラで活躍している。こうしたつながりを知ることで、旅はより意義深いものとなるだろう。
プリンス・エドワード島州
地産地消や島の文化、人との触れ合いなど
「アイランドライフ」を体験できる旅を訴求
コロナ前は「赤毛のアン」のファンがメインで、コロナ後も行きたいという需要は引き続き高いと見ている。まずはその需要を満足させたいが、今後はもう少し島にじっくりと滞在してもらいたい。
ただ見る、乗る、撮影する、それだけで満足して帰るのではなく、島の文化や「赤毛のアン」時代の遺産が散りばめられている島なので、島に暮らす人と実際にコミュニケーションを取りながら「本で読んだ世界」、いわば島の原点にある「アイランドライフ」を実感してもらえるような旅を「赤毛のアン」をいう素材をフックに提案していきたい。
アイランドライフを語る上で一番わかりやすいのが地産地消。島の豊かな水産物や農作物、酪農製品は、島のアイランドライフを語るには欠かせないもので、食のフェスティバルなど、地産地消から発展した旅行素材がコロナ前からたくさん出てきていた。近年ますます盛り上がっていて、日本人がもう少し自由な形で旅行できれば、こうしたフェスティバルにも参加できる余裕が出てくると思っている。
また宿も地産地消を活かしたグルメの宿、パッケージの大量仕入れでは販売できなかった小さくても魅力的な宿、テーマがある宿など、コロナをきっかけにもう少し地に足着いた旅行というものが浸透してくれば、こうした一般的ではないがユニークな宿を求めている層に訴えかけていきたいと思っている。
アルバータ州
先住民族の文化と大自然を守る歴史
アルバータならではの自然の癒し体験をツアーに
まずコロナ後の観光においては、観光客も、また受け入れる側も、ニューノーマルな対応が求められる。またこれからは、先住民族の文化や歴史、さらにサスティナブルな側面、アルバータ州ならではの大自然を昔から守ってきた人々の歴史についてもしっかりと伝えていきたい。
カナダならではの大自然を昔から守ってきた人たちの歴史、自然と共存する精神、現地でも先住民族の文化や歴史を見直そうという動きが高まっている。例えばカナディアン・ロッキーにあるレイク・ルイーズは、先住民族にとって聖なる地、パワースポットであり、そこでパワーをもらって旅をする、といった先住民族に紐づけた新しい旅の提案を行っていきたいと考えている。
ただきれいな景色を眺めるだけではなく、その土地に関わる人たちのストーリーを理解してもらえるような旅を提案していきたい。地元の人たちとの関わり、先住民族の文化を守ろうとする人たちを理解し、その歴史や文化を尊重する、それを日本に持ち帰り、今後の自分の人生にこの旅がプラスとなるような、インスパイヤされるような旅を前面に出していきたい。
大自然に癒されるのは、日本にはないアルバータ州ならではの体験だ。忙しくストレスの多い環境から逃れるにはぴったりなヒーリングとなるはず。先住民族のパワースポットでパワーをもらい、先住民族をはじめ多くの人たちによって守られた大自然の恩恵を受けながらの癒しの体験をツアーに盛り込んでいければと思っている。
ノースウエスト準州
先住民族の文化に触れ、環境の大切さを知る
世界トップクラスの鑑賞率のオーロラやオーロラ以外の素材も
定番のオーロラ鑑賞の「+α」として、先住民族の文化にフォーカスしていく。もともと準州の人口の約51%が先住民族で(2016年調査)、町でも普通に生活している。
先住民族には歴史があり、文化を尊重、継承する意識が強く、ぜひその文化を体験して欲しい。例えば、ドリームキャッチャー作りは、旅の記念としても人気だ。
ほかにも伝統的なジビエ料理は、自分たちが生きるために必要なもので、自然共存の意味がある。バイソンの肉や極北地区の北極イワナなど、抵抗なく食べることができる。
また毛皮は、動物愛護の観点から好まれないが、極北ではアザラシの毛皮は外気温から守ってくれるものとして着用される。どうして毛皮を着ているのか、その背景を理解することで、環境に対する認識も改まるはずだ。
2022年の冬は、国境再開後の初めてのオーロラ・シーズン。鑑賞できるオーロラに変わりがないが、現地の鑑賞施設や宿泊施設は感染対策を万全にし、安心して鑑賞できるよう準備を整えている。
また最近は、夏から秋にかけてのオーロラ鑑賞が人気だ。鑑賞できる時間は冬と比べて短いが、極寒ではないので外で気軽に鑑賞できる。来年夏以降に個人客向けの鑑賞スポットをまとめたマップを用意したい。
オーロラ以外に楽しめる要素も増えている。冬季はこれまで犬ぞりが主流だったが、今では氷原を自転車やスノーモービルで走ったり、夏季は湖が大きくあまり波が立たないので、初心者でも楽しめるカヌーやSUPに挑戦したりすることもお勧めだ。
ユーコン準州
小グループだからこそ楽しめる
大自然に触れるアクティビティーを提案
現在州境は開いているが、多くの観光客を一度に受け入れる態勢、インフラがまだ整っていない。観光客を徐々に増やすことで住民に配慮し、安心感を持ってもらうため、完全に観光が回復するには、1~2年単位で時間がかかると見ている。もともとFITや小グループに適したデスティネーションなので、パンデミックの前も後も、この状況にあまり変わりはない。
そのため、大きめよりもまずは小さめのグループからの回復を期待している。小グループだからこそできるアクティビティー、例えばユーコンの自慢である大自然を体験できるカヌーやハイキング、またこの先を見据え、新たなチャレンジとしてキャンピングなども提案していきたい。パンデミック前よりもさらにプライベート感のある旅を安心して楽しんでもらえると思う。
ユーコンはオーロラで注目されるが、オーロラのシーズン以外にも大自然の魅力が溢れている。これからはもっとオーロラ以外のこうした自然にも目を向けて欲しい。例えば、カナダで一番高い山、世界で一番広い山岳氷河、世界で一番小さな砂漠など、「世界やカナダで一番」というものが数多くある。
また夏は白夜に近い環境となるので、太陽がほとんど沈まず、夜間でもサングラスが必要となるくらい明るい中で屋外のアクティビティーが楽しめたり、北極圏ならではの美しい自然と触れ合ったりできる。
引き続きFITや少人数のグループに重みを置き、ユーコン準州ならではの大自然の魅力をアピールしたい。大自然そのものを楽しんで頂ける方には、ユーコンは最高のデスティネーションだと思っている。