ドイツ、都市・文化観光を基軸に魅力をアピール 日本人渡航の本格再開を見据え受入体制整備
新型コロナウイルスの感染拡大が世界の観光に大きな影響を及ぼした。しかし、ワクチン接種が進む中で移動の制限が段階的に緩和。ドイツの観光地も再開する動きを見せているほか、イベントについても一定の条件の下で再開する動きを見せている。そうした中でドイツ観光局も日本からの訪独旅行の再開を見据えて、日本人旅行者の人気が高い都市・文化観光を基軸としたプロモーションに取り組んでいく。地域の文化に着目したキャンペーンを展開していくほか、アフターコロナ期において注目が高まっている自然やサステナビリティに関する素材についてもアピールしていく。
経済活動が段階的に再開
クリスマスマーケットも今年は各地で開催へ
ドイツは新型コロナウイルスの感染状況を見ながら今年6月以降、移動に関する規制が段階的に緩和されつつある。また、社会・経済活動についてもワクチン接種の有無や陰性証明の確認などといった一定の条件の下で活動を再開している状況だ。
観光分野においても同様の動きとなっており、各地の観光施設やイベントについても再開が進んでいる。昨年は中止となったクリスマスマーケットについても各地で実施する方向で準備が進んでいる。
外国人観光客の受け入れについても緩和の動きが進んでおり、ドイツ近隣国からの旅行客から段階的に回復し、最近では米国や中東諸国など遠距離からの旅行者も戻りつつあるという。日本からの渡航については日本帰国時の隔離措置が継続していることもあり、現時点では目立った動きが見られていない。ただ、日本でもワクチン接種の進行により、規制緩和の動きが少しずつ進んでおり、ドイツ観光局は2022年春ごろから観光による渡航再開の動きが出てくるのではないかと分析している。
地域文化の魅力を発信する
「German.Local.Culture.」キャンペーン展開
新型コロナウイルスの影響により、観光のあり方に変化が見られるといった声がある一方で、日本人旅行者がドイツ観光に求めるものとしては引き続き文化体験を望む声が多いようだ。日本の旅行会社がアンケートしたところ、コロナ後のドイツ観光においてもコロナ前同様に都市観光や宮殿や庭園の見学、文化体験などを求める声が高かったという。そうしたことから、ドイツ観光局は都市・文化観光に関するプロモーションを継続した上で新たな要素を盛り込んだ活動を推進していくことにしている。
そうした中でドイツ観光局が取り組んでいくキャンペーンの1つがすでに今年から実施している「German.Local.Culture.」キャンペーンだ。このキャンペーンはドイツの伝統や真の姿にあこがれを抱く旅行者に対してドイツの地域文化や伝統をアピールしていくもの。同キャンペーンは海外旅行の本格的な再開に向け、ドイツが持つ魅力に思いを馳せることができる内容となっている。
具体的は「Taste.食」「Craft.匠」「Flair.粋」「Green.緑」という4つのテーマを打ち出し、地域で生き続けている習慣や手工芸の匠の技。そして、地域特有の郷土料理の楽しみ方も紹介している。ウェブサイトでは、1つのテーマにおいて9つのスポットを紹介。これまでのドイツ観光の定番スポットとあわせて、新たなドイツの都市・文化観光を訴求していく。
サステナブルや自然など
新たな視点の魅力も紹介
ドイツ観光において根強い人気を持つ都市・文化観光に付随して、近年関心高まっているサステナブルや自然をテーマとした観光資源に関する素材についても訴求していく。
サステナブルに関しては日本でも観光のテーマの1つとして注目が集まっている。そうしたことを受けて「Feel Good」のタイトルで持続可能性に関する観光の魅力を伝える。サステナブル関連で積極的な取り組みを進める宿泊施設や観光施設。そして体験プランなどを紹介していく。また、自然や健康をテーマとした「German Nature」キャンペーンも展開する。ここでは特にウェルネス関連として温泉の魅力を紹介。今年、ドイツの温泉地3か所が世界遺産に新たに登録された。また、ドイツには数多くの温泉保養地が存在することから、オンラインサイトなどを通じてアピールしていくことにしている。
このほか、2022年のドイツ観光において注目したいのがドイツの小さな町であるオーバーアマガウで開催される「キリスト受難劇」これは、村の人々が総出で参加する10年に1度開催される劇で世界中から多くの観光客が訪問するイベントとして知られている。当初は2020年に開催される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で開催を延期しており、2022年に待ちに待った実施となる。本格再開されたドイツ観光を象徴するイベントの1つとして注目しておくべきものといえそうだ。
ターゲット層は60歳代男女と40歳女性
富裕層向け観光素材も訴求
ドイツ観光局はWithコロナ期の日本人観光についてまずは、時間的な余裕がある60歳代以上の男女。そして旅に対してアクティブな動きを見せる40歳前後の女性が需要をけん引していくとみている。まずはそこの世代に照準を定めた取り組みを推進していくとしている。さらに、新たな観光需要の創出に向け、富裕層マーケットに向けた取り組みも強化していくとしている。ドイツ国内には富裕層マーケットに適した観光素材が数多く存在しているという。そうしたことから来年には富裕層旅行をターゲットとし商談会を計画するなど、需要開拓に向けた取り組みを積極的に進めていく。
ワクチン接種などの取り組みが進んでいることなどにより、海外旅行の本格再開に向けた歩みは着実に進んでいるといえる。そうした中でドイツの観光施設やドイツ観光局は再び日本人旅行者を迎え入れるための準備を着々と進めていく考えだ。
ドイツ観光局「ドイツ旅行展」をオンライン開催
現地から12のサプライヤーが参加
ドイツ観光局は11月8、9日、日本マーケットを対象としたBtoBイベント「ドイツ旅行展」をオンラインで開催した。当日はドイツ本国から地域観光局や観光関連事業者など12団体が参加。日本の旅行会社との商談会を行った。このほか、オンラインセミナーを開催し、ドイツの観光の現状や今後の日本でのプロモーション活動について紹介した。
セミナーではドイツ観光局の西山晃アジア・オーストラリア統括局長がドイツ観光を取り巻く最近の状況について紹介。今年6月以降段階的に行動規制が緩和されていることと新型コロナウイルスワクチン接種の進行により、米国や中東諸国などからの旅行者が戻りつつあることを紹介した。日本かの旅行者については、日本側の水際対策の緩和次第で動き出すことになると見ており、そこを視野に入れながらプロモーションを進めていく方針を説明した。
商談会に参加した12団体からは、コロナ禍の中において新たにオープンした施設など最新情報の紹介を始め、アフターコロナ期を見据えた新たな旅トレンドに対応した旅行プラン、MICE向けの素材などをアピール。日本の旅行会社との活発な商談が行われた。
→次のページへ「スペイン、マドリードの中心部に新たな世界遺産誕生!」