ハワイ・オンライン・フォーラム Hawai‘i Online Forum
「新しいハワイ観光のあり方」を議論
ハワイ・オンライン・フォーラム第1回開催
ハワイ州観光局は、「ハワイ・オンライン・フォーラム2022」の第1回を5月19日に開催した(航空新聞社ウイングトラベル事業部協力)。「新しいハワイ観光のあり方とは」をテーマに、4月初旬の日本旅行業協会(JATA)ハワイ視察団の報告、またそれを踏まえた今後の海外旅行市場本格再開へ向けた取り組み、ハワイの旅行商品造成のあり方など議論した。
海外旅行の再開は
最も重要なハワイから
JATA高橋会長
冒頭、JATAハワイ視察団の団長を務めたJATA会長の高橋広行氏(JTB取締役会長)がビデオメッセージを寄せ、「海外旅行の再開に向けては、海外旅行の象徴であり、最も重要なデスティネーションであるハワイを皮切りに、という思いから、4月初旬にJATAとして最初の視察団をハワイに派遣することとした」と述べ、視察団の経緯を説明。
またその目的として、ハワイが日本の旅行者にとって「安心・安全」かどうか、これまで通り日本人旅行者の受け入れ態勢が可能かどうか、の2点を挙げ、どちらも満足のいく結果だったことを報告。今後の商品造成においては、「これから旅行会社も、ただ単に観光客を送るだけではなく、ハワイの人々と共に「思いやりの心」をもってハワイの観光振興に主体的に関わっていかなければならない。そうすることで、これまでとは一味も二味も違う新たなハワイの魅力をお客様にお届けできるようになるのではないか」と強調した。
安心・安全の体制構築など
3つの課題を提示
JATA稲田海外旅行促進部長
続いて、同じく視察団に参加したJATA海外旅行推進部長の稲田正彦氏が「ハワイ旅行の再開と需要回復の取り組み 今後の展開と課題について」と題したプレゼンテーションを実施。稲田氏はハワイ旅行再開へ向けた課題として、(1)安心・安全の体制構築と旅行参加者に対する案内項目の検討、(2)本格的な再開時に向けた航空手配、地上仕入れ、サービスの確保、(3)造成、手配、販売、各部門での人的インフラ不足の補完、の3点を挙げた。またJATAとして7月15日から実施を予定している「JATA海外旅行再開プロジェクト」について説明した。
現地、旅行会社、航空会社の
連携が重要
JAL中野執行役員
次にプレゼンテーションを行った日本航空(JAL)執行役員旅客営業本部営業統括の中野星子氏は、視察団への参加を踏まえ、航空会社の視点でハワイ旅行再開へ向けた今後の展開と課題について言及。ハワイ線の現状においては、3月の水際対策緩和によりビジネスクラスを中心に需要が回復、ゴールデンウイーク期間中は満席のフライトが出るなど、高い搭乗率を記録したが、夏以降の本格的な回復に期待を寄せた。
また需要回復へ向けた取り組みとして、デジタル証明書アプリ「VeriFLY」によるスムーズな渡航へのサポート、さらなる増便、今年50回目を迎えるホノルルマラソンをはじめとした現地イベントによる需要喚起などについて説明。「コロナ後のハワイ需要の回復においては、現地、旅行会社、航空会社、この三者がこれまで以上に連携し、協力していくことが重要だ」と訴えた。
「マラマハワイ」の推進、
イベントにも注力
HTJヴァーレイ日本支局長
ハワイ州観光局からは、日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏がハワイの現状、観光局で展開する「マラマハワイ」、今後の施策について紹介。ハワイの現状においては、JATAハワイ視察団の様子、5月9~13日にハワイ州知事のデービッド・イゲ氏をはじめとするハワイ州代表団が来日した様子を挙げ、航空各社の運航状況、ワクチン接種証明の取得やPCR/抗原検査など、渡航の基本プロセスについて改めて内容を伝えた。
「マラマハワイ」においては、地元社会に配慮し、持続再生可能な観光を目指す「再生型観光(リジェネラティブ・ツーリズム)」に基づいた取り組みとして、環境保護、訪問者の満足度向上、またオーバーツーリズムへの対応として導入したハナウマ湾自然保護区をはじめとするオンライン予約システムなどについて触れた。今後の施策については、デジタルマーケティング、旅行会社、航空会社と組んだプロモーション、さらに全国各地のイベントプロモーションに力を入れる姿勢を見せた。
現地の熱意、高い期待を実感
「日本は一番戻って欲しいマーケット」
プレゼンテーションの後には、航空新聞社ウイングトラベル事業部編集統括の石原義郎をモデレーターに、JATA稲田氏、JAL中野氏、HTJヴァーレイ氏によるパネルディスカッションを実施。JATAハワイ視察団に参加しての感想、ハワイツアー再開後の状況、ハワイツアーの課題、需要回復に向けた取り組み、中期的な需要予測、再生型観光など、さまざまな話題について議論を重ねた。
視察団参加の感想については、JATA稲田氏、JAL中野氏ともに現地ハワイ側の日本マーケットに対する熱意、高い期待について言及。改めて海外旅行の良さ、ハワイの良さを実感したと答えた。これを受け、HTJヴァーレイ氏は、「日本人はハワイの自然や文化、人々に対して敬意を持っており、マナーもきちんと守る。その意味でも日本はハワイにとって一番戻って欲しいマーケットであることを伝えたい」と強調。今後はマーケットバランスを保つ上でも「日本マーケットの比率をきちんと上げていかなければならない」と述べた。
パッケージ商品は夏以降に期待
JAL、需要増に応じて「確実に座席を戻す」
ツアー再開の状況については、旅行会社各社でハワイの旅行商品を発表しているものの、現状は個人旅行や手配旅行がメインで、「7月以降の夏休み、秋の予約は入っていると聞いている」(JATA稲田氏)、「主催旅行は夏休みに期待している」(JAL中野氏)といった状況。ヴァーレイ氏も現況として、「3~4月はタイムシェアや物件を持っている人などが動いた。その後、富裕層、ハイエンドが動き、次いで家族連れが急増している」と説明。観光局への問い合わせも増加しているという。また団体についても、「既に600名の団体が予定されているし、学校もクラス単位のグループが動いている」と答え、大型団体や教育旅行も今後戻っていく状況だ。
一方、ツアー再開にあたっての課題として、JATA稲田氏は、数十名から100名以上の大型団体が出た場合の座席の確保、また「コロナ前の状況と比較してどのくらい対応できるのか」など、受け入れ態勢について指摘。これを受け、JAL中野氏は「航空会社としては、需要の戻りとともに、確実に座席も戻していこうと思っている」と強調、出入国要件の緩和に応じた積極的な施策を行っていく姿勢を見せた。
またプレゼンテーションの中で、「世間の目」が課題だと指摘したJATA稲田氏。「視察団派遣後、マスコミからは肯定的な報道が多かった。「お隣さんが行った」という状況が進めば、行きやすい雰囲気が出てくるので、それをスムーズに進めるべく、海外旅行再開プロジェクトを大きく取り上げて「海外は安心だよ」ということを、しっかりとやっていきたい」と語り、今後への期待を示した。
コラボレーションによる相乗効果に期待
現地での消費額増へ
需要回復に向けた取り組みとしては、 JAL中野氏が自社で実施した「ハワイウィーク」について紹介。「まずは、旅に出よう!という気運づくりが大切」とアピールした。またHTJヴァーレイ氏は、「新しい情報、啓蒙したい情報をしっかりと提供していきたい」とした上で、 パートナーと時期を見たコラボレーションの重要性について言及、相乗効果の高いプロモーションを目指していく考えを示した。
中期的な予測に関しては、JATA稲田氏が「2023年の訪問者数と消費額について、消費額10%増の目標を掲げていたが、滞在者数が同程度伸びたら、消費額をさらに増やしたい。今までのアイテムだけでなく、新しい内容、付加価値の高いものを加えていきたい」とコメント。またJAL中野氏は、「隣島はハイエンドのお客様が多い。ハイエンドの層を取り込んでいき、現地での滞在消費額を増やしていきたい。現地での体験型、アドベンチャーツアーなど、積極的に取り組んでいきたい。また需要に応じて増便し、地方便も増やしていきたい」と述べ、ともに現地での消費額増について言及した。
現地の満足度を上げる「再生型観光」の重要性旅行会社の意識変革も重要
また、再生型観光についてHTJヴァーレイ氏は、「観光は大切な産業という意識が高いなか、消費額を高めるということが一番分かりやすいが、ハワイの人たちはマインドフルな旅行者を増やしてほしいという気持ちが強い」と述べ、「質の高い、意識の高いお客様が欲しい。観光業に対する地元コミュニティの満足度を上げていくことに重きを置いている」と現状を語った。
こうした取り組みを展開した上で、「アメリカマーケットのボランツーリズム、エコツーリズムなどを、どうやって日本マーケット向けに開発していくか、日本のテイストを加えて変えていくことが大切」と強調した。
これを受け、JATA稲田氏は「造成に携わる人がどこまで理解して、販売していくか、という折り合いをつけていくことが大切」と指摘。「旅の意義を旅行会社が意識する方向にもっていかないと、価格一辺倒になってしまう」と答えた。またJAL中野氏は「日本人にとってやはりハワイは特別な場所。それを維持する新しいツアーが必要。体験型ツアーなど、参加したいと思うような意識な人に参加してもらいたい。それが再生型観光につながるのでは」と提案した。
再生型観光を「共創する」
ハワイが「新しい観光」のモデルケースに
パネルディスカッションの最後に、モデレーターを務めた航空会社石原より、「競い合う『競争』は必要不可欠とは思うが、コロナを経て「協調」と、共に創る「共創」の大切さはJATA高橋会長も指摘している。持続可能な観光、責任ある観光、観光の再生は言葉で言うのは簡単だが、実際に推進するのは容易ではない。
ハワイではそれが実践されており、コロナ前には戻らないという強い決意を感じている。旅行者も業界もこれに参画し、ハワイが観光のモデルケースになることを期待したい」と述べ、新しいハワイ観光のあり方の道筋を示した。
ハワイ・オンライン・フォーラム 第2回が6月30日に開催 ハワイ州観光局では、昨年に引き続き「ハワイ・オンライン・フォーラム」を計3回開催する予定だ。第2回は、6月30日に「リジェネラティブ・ツーリズム」をテーマに開催、第3回目も後日開催する予定だ。なお、第1回目のハワイ・オンライン・フォーラムの内容については、ハワイ州観光局業界サイト内でアーカイブを公開している。 |
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