ハワイ州観光局 Hawaiʻi Tourism Japan(HTJ)
ジャパンサミット、旅行会社に再生型観光体験
舵は切られた、課題解決し商品造成はチャンス
ハワイ州観光局(HTJ)は4月にJATA(日本旅行業協会)視察団の来訪を受け入れ、6月には3年ぶりに「ジャパンサミット」を開催した。その間の5月にはハワイ州のイゲ知事以下のハワイの政界・経済界・観光業界のトップが来日し、岸田首相を表敬訪問するなど、日本の政財界、旅行業界と関係を深めた。4−6月は、日本とハワイ間のビッグイベントが続いた。
海外旅行の再開はJATA視察団のハワイ訪問が契機となったが、コロナ禍を経て、ハワイ州が再生型観光に舵を切ったことを認識させる機会でもあった。6月のジャパンサミットでは、具体的な体験プログラムも導入され、再生型観光へハワイの観光が変わったことを改めて実感させた。ハワイの地域住民が望む再生型観光に向けて旅行会社が商品造成できるのか、ハワイ州観光局のミツエ・ヴァーレイ日本支局長(写真)に聞いた。
【取材・文章・写真:編集統括 石原義郎】
より深い旅ナカ体験、新しい商品開発に協力
今回のジャパンサミット開催の意義は
(ヴァーレイ氏)コロナ禍により今回のサミットは3年ぶりで、旅行業界にはまずハワイを体感し、ハワイは訪れても大丈夫と思ってもらうことが重要だった。ハワイはデスティネーションの中で、最もインフラが整っていることを再認識してもらった。日本とハワイの長い歴史の中でリレーションシップを復活するには対面することが重要と判断した。
ハワイ州としては、再生型観光を啓蒙しなくてはならない。旅ナカの体験を深くするには新しい商品開発が必要になる。これまでのホールセラー商品では形が決まっており、日本語でのサービスは限定される。
日本マーケットは、米本土マーケットと比べると、現地ツアーは2割程度。米本土マーケットは英語ということもあり、深堀の商品が多い。「マラマハワイ」のプロダクト開発を推奨しているが、日本人は自然やハワイの歴史を分かっている。日本マーケットで深いプロダクトを開発するには、造成する旅行会社に再生型観光を体験してもらうことが一番と考えた。
ニッチなツアーをどのようにつくり、どうやって利益を出すのか。旅そのものの考え方を変えていかなくてはならない。今すぐ変えるのではなく、特別なツアー、ビーチクリーンなど人数限定のものを少しずつ紹介することから始める。ビショップ ミュージアムと関係性のある現地NPO法人と接することで、SDGs、サスティナブル、再生型観光にはどんなプログラムがあるかを感じてもらった。
それらを知ることで、ハワイ州観光局(HTJ)、日本ハワイ旅行業協会(JHTA)、日本旅行業協会(JATA)が入ってケーススタディを作っていく。旅行会社に興味を持ってもらい、旅行会社に沿ったサービスができるきっかけづくりにしたい。
少人数、ニッチなツアーが求められる
コロナを経てハワイの旅行商品はどう変わっていくとみているか
(ヴァーレイ氏)ニューノーマル後は、こだわりの少人数制、内容の濃い商品が選ばれる。多少単価は高いが少人数制のニッチなツアー造成をしなければならないことは旅行業界も認識している。
マラマハワイのコンセプトに共感してもらうのを、ここから始める。現地で体感してもらい、ハワイの現状を知り、サプライヤーと話し、ワークショップに参加し、実際に体感してもらい、ネットワークを構築していただく。
地域貢献へ
MICE、教育旅行でケーススタディ
NPOが用意する体験やアクティビティを旅行会社が利用する場合は、
ボランティアとして参加料を払うことで、地域への貢献となるのか
(ヴァーレイ氏)いろいろな方法があり、企業CSRでは活動に参画してもしなくても企業として寄付する。その後のレポートで海の透明度が数%増した、ハワイア
ン・モンクシールの頭数が増えたなどと報告する。その対価として寄付する。
もう一つは教育旅行などのグループ。ゼミやクラス単位で来て、マラマハワイの啓蒙活動を行う。エアラインもマイレージを寄付する。
その土地にある自然を次世代に残すためにどう貢献できるか。地元が守ろうとしているものを知ってもらい啓蒙するだけでもプラスになる。それを体験型ツ
アーに組み込むには時間がかかる。
大手よりもニッチな旅行会社のほうが得意とする分野かもしれない。大手も細分化してスペシャルチームを作っているので、大手ならMICEの企業CSR、教育
旅行でケーススタディ化していくことはあると思っている。
マラマハワイ、SDGsが浸透する日本市場
日本とハワイに共通する価値観ということがよく言われるが
(ヴァーレイ氏)お互いに島国で自然資源の山も海もあり、自然に神が宿る古い教え、先祖代々のものを守り継いでいく意識を持っている。ハワイの自然資源を地域社会が守る活動を紹介すると、日本では賛同する人が多い。
これを旅行商品に結びつけることができるか。地域社会と旅行会社、自治体がつながり、地元を軸として、どういう人に来てほしいのか。地域を守るためにメッセージを発信する。
地元が地域をどうするかということが、コロナ禍で起きた。マラマハワイの指針を示した時に、日本マーケットほど、このことを理解してくれるところはなかった。ワークショップのコミュニティも日本側と意見交換すると同じ思いを持つ。地域社会がプライドを持って次世代に環境を残し、資源を守ることが問われる。
マラマハワイのコンセプトの理解は日本で進んでいる。内容が浸透して、メッセージを寄せてくれる。SDGsがこれほど浸透しているマーケットは他にはない。
マラマハワイのムーブメントを起こしていきたい。マラマハワイに合った日本市場が一番欲しいマーケットだ。日本も逆にこれを取り込むこともできる。再生型観光という新しい旅の形が、DMOとしての将来の観光促進に向けての良いケーススタディになると考える。
旅は変わる、旅行会社の商品開発に期待
ハワイ観光と旅行会社の将来をどう見るか
(ヴァーレイ氏)ホールセラー、旅行会社はチャンスだと思う。ニューノーマル後の旅は絶対に変わる。その中で、安心・安全は絶対に必要となる。パッケージツアーの魅力は自分では手配できない、自分では見つけられない体験があることだ。旅行会社がニューノーマル後に、どんなプロダクトを出してくるかが楽しみであり、意見交換もしている。
軸となるのはサスティナブルツーリズムで、マラマハワイに賛同しているが、実際に具体的な商品化をするとなると、ステップが大切になる。地元にあるものをどうやってパッケージ化するかは難しいが、必要なものだ。少人数で単価は高くても、商品を開発してメッセージを一緒に伝えられると、一つのケーススタディとしては素晴らしいものになる。FITでは決してアレンジできないものだ。
また、商品を開発・造成したものの、ターゲット・オーディエンスの絞り込みをどうするか。宣伝部、広報部、商品企画、営業、団体旅行、教育旅行の横串の連動も必要になる。大手は経験値、コンテンツ、パワーがある。中小でもそれが可能になっている。