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2023.01.05

ハワイ州観光局(HTJ) インタビュー1

「マラマハワイ」を軸にパートナーと協業

春先に新キャンペーン

一連の水際対策の緩和により、ゆっくりとしたペースではあるものの、徐々に復活の兆しを見せる海外旅行需要。ハワイはそれをリードする立場として、再生型観光(リジェネラティブツーリズム/地域の自然環境や文化歴史を尊重し、観光を通してそれを維持するだけでなく再生していこうという考え方)に基づいたキャンペーン「マラマ ハワイ~地球にやさしい旅を~」を展開。数(訪問者数)から質(訪問者と地元コミ ュニティーの満足度、消費額)へのシフトを図っている。本格的な需要回復が期待される2023年、ハワイ州観光局(HTJ)は何を目指していくのか。今後のマーケティング施策について、日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏と、1月1日付で局次長に就任した寺本竜太氏に話を伺った。

 

ミツエ・ヴァーレイ日本支局長 寺本竜太局次長

現況

 

海外旅行への機運醸成の必要性
旅行会社の販促との連携に注力

 

 日本からハワイへの訪問者数は、2022年1~9月までの累計で、コロナ前の2019年同期比で10%にとどまっている。その後の日本政府による水際対策の緩和で需要は着実に回復傾向にあるものの、本格的な戻りにはまだ至っていない状況だ。
 もちろん円安や燃油サーチャージの高騰、全国旅行支援による国内旅行へのシフトといった要因が考えらえるが、ヴァーレイ氏は「まだ『海外旅行に行くぞ!』という状況にはなっていない」と指摘する。
 こうした状況の中でも「ビジネスクラスは埋まっている。リピーター率は80%を超えており、タイムシェア利用率も高い。今はお金や時間に余裕があり、旅慣れた『ハワイに行きたい』と思うFIT層が中心」という。
 旅行会社においても、こうしたFIT層へのアプローチとして、ダイナミックパッケージの販売に力を入れているのが現状。今後は主力のパッケージツアーの販売にも注力できる環境づくりが必要だ。
 ヴァーレイ氏は「パッケージは安心・安全が売り。旅行会社が意識してパッケージツアーを販売して頂けるよう、しっかりとサポートしていきたい」と語る。その意味でも「まずは『海外旅行へ行く』という機運醸成を業界一丸となって高めていく必要性がある」と説く。

 

2023年の施策

 

 

旅行会社、航空会社への販促サポート

FAMやウェビナーなど、トレーニングサポートも

 

 2023年の第一四半期(1~3月)においては、こうした機運醸成へ向けた取り組みんがメインとなる。デジタルを中心とした露出に加え、パートナーである旅行会社、航空会社と連動した販促サポートに力を入れる。
 デジタルによるBtoC展開においては、まずは「海外旅行へ行こう!」というメッセージを伝え、ハワイ旅行への機運を盛り上げていく。またパートナーとの販促サポートにおいては、「旅行会社ごとのタイミングに合わせてサポートしたい」考え。これからは春休みやゴールデンウイーク、夏休みの時期、また一方でラストミニットのプロモーションなど、旅行会社それぞれのプロモーションに寄り添ったサポートを行っていく。
 併せて重視するのがトレーニングサポート。「マラマハワイ」の体験プログラムを盛り込んだFAMやウェビナーの実施、さらに観光局の公式ラーニングサイト「アロハプログラム」の上級資格取得者が在籍する「ハワイサテライトオフィス」と連携した現地の最新情報の提供も重要だ。

 

「マラマハワイ」傘下の新キャンペーン

パートナーのプロモーションと連動できる内容に

 

 一方、第二四半期(4~6月)には、「マラマハワイ」傘下の新キャンペーンを開始する予定。メディアやデジタルを使った広告展開も検討しており、春から夏へ向けての旅行会社や航空会社の新商品のプロモーションと連動できる内容にする。ほかにもイベントやプロモーションの実施も検討、ヴァーレイ氏は「旅行会社や航空会社のプロモーションと一緒にやることで相乗効果を狙いたい」と意欲を見せる。

 

旅行者ができることをまとめた 「マラマハワイブック」

 

マラマハワイ

 

「マラマハワイ」は長期的視野で展開

分かりやすい、参加しやすい商品化目指す 

 

 観光局で進める「マラマハワイ」については、長期的な視野で展開していく方針。ヴァーレイ氏は「旅行を通じて地域に貢献する、という意義のある旅行を進める再生型観光を定着させるには時間がかかる。長期的な視野でトレーニングや商品開発を行い、たくさんの機会を作っていきたい」と語る。

  昨年9月にはエイチ・アイ・エスと「マラマハワイ」推進に向けたパートナーシップ協定覚書を締結。観光局としては、こうした取り組みを他の旅行会社にも広げていく考え。今年は「分かりやすいキャンペーン、参加しやすい商品開発を目指していきたい」という。

  ただ「マラマハワイ」の体験プログラムを商品化していくには、日本語対応や催行人数など、クリアしなければならない課題も多い。そのため「現地側で問題をしっかりと理解した上で、少しずつ着実に取り組んでいく」方針だ。また先行して教育旅行やインセンティブでこうした「マラマハワイ」のプロダクトを取り入れ、実績を作った上で、リピーターへのアプローチなど、「ニーズを高めていき、プロダクト化していきたい」という。
 「マラマハワイ」は、観光局にとって大きな軸のひとつ。ヴァーレイ氏は「マラマハワイをベースに、ハワイのポジショニングを上げていきたい」と意欲を見せる。

 

ターゲット

 

ロマンス、ゴルフに注力
ワーケーション、アウトドアも

 

 ターゲットについては、ロマンス(ハネ ムーン、カップル、周年旅行など)を改めてアピール。さらに隣島の訴求においてゴルフ需要にも力を入れていく。
ロ マンスにおいては、ハワイのシェアが高いことから、「パートナーと一緒に新たな策を練っていきたい」意向。ゴルフにおいては、隣島を含めた新たなプロダクトを春先に発表、「旅行会社の商品開発のアシストになれば」と期待を寄せる。
 新たな需要としては、ソフトシーズン対応として引き続きワーケーション、またアウトドアといった需要の取り込みも重要だ。特にアウトドアについては、「島ごとのプロダクトをしっかり訴求していく」とのことで、ゴルフ同様、隣島を絡めた展開を目指す。

 

三世代ファミリー「夏までには」
旅慣れた人に「新しいハワイ」訴求

 

 三世代ファミリーの戻りにも期待する。「夏までには需要を戻していきたい」意向で、パートナーである旅行会社や航空会社と連携した取り組みを行っていく。
 また旅慣れた人へのアプローチも重要。「まずハワイを旅行先に選んでもらえるよう、新しいハワイを見せることが大切」として、「マラマハワイ」や隣島の提案で「新しいハワイ」を見せていくことで新たな需要獲得を狙う。

 

隣島

 

各島でできることを

しっかり訴求

 

 「新しいハワイ」を見せる上で、また「マラマハワイ」を進めていく上でも、隣島のプロモーションも引き続き重要な施策。ハワイ州を構成する各島では、それぞれ観光のアクションプラン「DMAP(Destination Management Action Plan)」を作成。再生型観光に基づき、地元コミュニティーの意見を取り入れながら、交通混雑を避ける取り組みや、地元の自然や文化、伝統の再生も目指した各種体験プログラム作りを進めている。
 ヴァーレイ氏は、「隣島はアメリカ本島からの需要が中心だが、日本を含む国際マーケットも重要というスタンス。島ごとにターゲットを設定し、島で何ができるかをしっかりとアピールしていきたい」と述べ、隣島訴求への意気込みを見せる。

 

エリア展開

 

プロモーション効果の最大化狙う
地方では運航再開に合わせて集中投下

 こうした一連のプロモーション展開においては、効果の最大化を狙う。その意味でも「プロモーションのタイミングとターゲット設定が大切」と語る。例えば、デジタル展開においては、ターゲットを設定、また広告展開においては、リピーターの6~7割のシェアを占める関東エリアを中心とする考え。「ラジオやテレビなど、メディアの性質を理解した上で、ターゲットや展開エリアを選んでいく」方針だ。
 一方、地方においては、例えば運航再開など、イベントに照準を合わせた集中投下を行う。「パートナーである旅行会社、航空会社とタイミングを合わせ、相乗効果を狙って各社のプロモーションのアシストとなればと考えている」という。

 

BtoBプログラム

 

4月にジャパンサミット、11月にミッション

5月に消費者向け「ハワイエキスポ」復活

 

 また、今年実施するBtoBプログラムは、昨年6月に実施した「ジャパンサミ ット」と、昨年11月の「ジャパンミッ
シ ョン」の2つ。
 「ジャパンサミット」は、日本から旅行会社スタッフをハワイへ招き、現地でセ
ミ ナーやサプライヤーとの商談会を行う
イ ベントで、昨年は3年ぶりに実施。昨年は、参加者がタロイモ畑や小川の清掃活動を通じて「マラマハワイ」の体験を実践。今年はコロナ前の開催時期であった4月中旬に実施する予定で、昨年同様「マラマハワイ」の体験プログラムを盛り込む。

  同イベントの目的について、寺本氏は「まずは予算がなく日本を訪れることが叶わないパートナー(現地サプライヤー)へのサポート、また旅行会社の方々に現地での様々な体験を通して、現在のハワイを体感して頂くことが一番の目的」と語る。予定する「マラマハワイ」の体験ツアーについても、「実際に体感した実体験をもとに、マーケティングパートナー、 NPO団体と協業したプロダクトを開発、商品化し、各社のプロダクト、メディア、スタッフからの生の声を通じて、消費者の皆さまへ啓蒙していただきたい」と期待をかける。

 一方、「ジャパンミッション」は、逆にハワイからHTJの上局にあたるハワイ・ツーリズム・オーソリティー(HTA)の幹部が来日、パートナーである旅行会社や航空会社への訪問や、来年の活動方針を紹介するセミナーなどを通じ、日本マーケットにおけるハワイの存在感を高めることを目的としたイベントだ。

  昨年は、8年ぶりに各島の観光局のトップが集結。日本市場への期待の高さが表れた。今年については、「現地サプライヤーを招致したBtoB商談会も併せて実施したい」という。
 ほかにも、観光局のパートナーをはじめとするハワイ関連企業が集まる「ハワイ会ジャパン」との協業によるセミナーでは、直行便が飛ぶターゲット都市を中心に時期を見て開催していく意向。寺本氏は「オンライン参加を含めた効率的な協業により、可能性や効率を上げていきたい」と語る。
 さらに5月末の週末にはBtoBtoCイベントとして「ハワイエキスポ」を渋谷ヒカリエで開催する計画。リアル開催は、4年ぶりとなる。パートナーの旅行会社や航空会社、サプライヤー、ハワイ関連企業などを集め、一般消費者へ向け、ハワイの復活を大きくアピールする。

 

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