記事検索はこちらで→
2024.06.03

学生の探究心を刺激する オーストラリアへの教育旅行

 

ごあいさつ

オーストラリア政府観光局

日本・韓国地区局長 デレックべインズ

 オーストラリアを訪れる日本人旅行者、日本を訪れるオーストラリア人旅行者が共に増加傾向にあり、双方向の交流が順調なのはうれしい限りです。今後オーストラリア政府観光局は、コロナ禍以前のように教育旅行の受け入れにも積極的に取り組んで参りたいと考えています。
 日本との時差がほとんどなく、恵まれた気候のオーストラリアは、雄大な自然と開放的な雰囲気に満ちています。フレンドリーな動物たちとの触れ合い、6万年以上の歴史を持つ先住民の文化体験をはじめ、オージーとの交流を通してグローバリズムを感じ取ることもできるでしょう。さまざまな学習要素は多くの学生にとって興味深く、彼らの探究心をかき立てるものと確信しています。海外での教育旅行をお考えの学校様は、ぜひ次回の渡航先に魅力あふれるオーストラリアをご検討いただければ幸いです。

 

学生の探究心を刺激する

オーストラリアへの教育旅行

 旅行が物見遊山から体験重視型に移行して久しく、教育旅行でも敏感にこのトレンドを取り入れてきた。しかし時代は今、探究的な学習へと発展し、教育旅行に携わる現場も急速な変化への対応が求められている。教育旅行を探究学習の機会として機能させるため、また教育旅行をオーストラリアへ誘致するためには何が必要なのだろうか。

 

行きやすさの条件そろう

オーストラリア

 日本人のアウトバウンドがコロナ禍以前に戻り切らないなか、オーストラリアへの日本人渡航者数は順調に推移している。2 0 2 3 年、日本人の海外渡航者数は9 6 2万人で、対2 0 1 9 年のリカバリー率は4 8%。これに対し、オーストラリアへの日本人渡航者数は29万7720人で、同58%と全体を上回った。さらに、直近12カ月(2023年4 月~ 2 0 2 4 年3 月)の数字は3 4 万3500人と増加傾向にある。
 その背景には航空路線の回復の速さと路線網の充実が挙げられる。両国間のフライト数は、2 0 2 4 年6月時点で2 0 1 9 年比148%となる予定。加えて、羽田、成田、関空からオーストラリアの6都市へ伸びる路線網の充実もオーストラリアの強みだ。航空会社も5社が乗り入れており、直近では4月からジェットスターが大阪(関空)・シドニー間(週3便)の運航を開始した。
 こうした状況の下、オーストラリアへの教育旅行者数も順調に伸びており、渡航先としての絶大な人気を維持しているのが伺える。その条件として、治安の良さ、衛生環境や医療環境の充実といった安全面における信頼の大きさはオーストラリアならではのメリット。時差がわずか1時間(夏時間を採用している州は2時間)以内と少ないことも、学生の体調や無駄のない時間管理、日本との連絡の取りやすさという意味で重視できる。また主要都市の多くは1年を通して温暖で過ごしやすい点も好条件と言えよう。「行きやすさ」という意味でこれほど条件が整った海外デスティネーションはそう多くはない。

大使館・領事館リスト

在オーストラリア日本国大使館

在シドニー総領事館

在パース総領事館

在メルボルン総領事館

在ブリスベン総領事館

在ケアンズ領事事務所

 

探究学習の鍵は

十分な事前事後学習

 2022年度からの学年進行で実施された新学習指導要領が3年目を迎えた。同要領のポイントの1つが探究的な学習だ。探究学習とはすなわち、主体的・対話的に深く学ぶということで、これからの予測困難な時代に「生きる力」を養うことを目的としている。今後は何を学ぶかだけでなく、どう学ぶかというアクティブ・ラーニングが学習のスタンダードになっていくだろう。
 教育旅行、なかでも修学旅行は探究学習を実践する場として最適だが、「それはあくまでもやり方次第」と言い切るのは、晃華学園中学校高等学校の安東峰雄先生。中高一貫の女子ミッションスクールである同校では、中学1年生からさまざまな教育機会で「課題の発見、分析、実行、見つめ直す」という探究プロセスを意識づけさせ、高校3年生の4月に実施する修学旅行をその集大成と捉えてきた。修学旅行と探究学習の相性を高めるために必要なのは、「どれだけ事前事後の学習時間を確保できるかにかかっている」と主張する。同校では高校1 年生の3学期から事前学習を開始。S D G sを中心とする観点でグループごとに課題を見つけ、考察、発表することで教員を含む参加者全員がテーマを共有していく。事後学習は各グループがまとめた記事を新聞制作という成果物として発表し、これらすべてのプロセスをおよそ1年以上かけて行う。培ってきた探究プロセスを土台に、自ら見つけたテーマを深く学ぶことで、「設定したテーマを自分事として捉えられるようになることも大切な学び」と強調した。

安東峰雄先生

 

学校を主役に

旅行会社と現地がサポート

 旅行業界での勤務経験をもつ安東先生は「教育の一環としてその旅行をいかに意義深いものにするか、学校と旅行会社と現地とで作り上げていくもの」と言明する。そのためにも教員は旅行会社のお客様ではなく主催者としての自覚が求められ、旅行会社は価格競争ではなく学校のサポーターとしての役割をより意識した対応が必要となろう。現地サイドに関しても、学生向けの素材をさまざまな形で提供しつつ、「教員に向けても指導用資料を用意するなど事前事後学習のサポートに力を入れることで探究的な学習の受け皿として付加価値を高めていくのが望ましい」と提言した。
 広大な国、オーストラリアには多彩な気候帯、世界遺産を含む自然環境、多民族国家による多種多様な文化に加え、科学や鉱業、野生の動植物、歴史、宇宙など学生の興味をかき立てる切り口が無数にある。また、現地校の訪問やファームステイといったオーストラリアならではのプログラムでコミュニケーション能力を磨いたり、英語圏の国でグローバルな視野を養ったりと、これからの未来を生きる学生にとってかけがえのない機会を提供することができる。
 オーストラリア政府観光局では、現地の最新情報を自らのペースで学べる機会として、業界向けオンライン学習プログラムを提供。JTBは今年2月、中学校・高等学校を対象とする探究学習プログラムを立ち上げてサポートに乗り出しており、業界でも目立った動きが出てきている。私立と公立では予算も状況も異なるが、教育旅行は未来のリピーター育成につながることも視野に入れ、旅行業界全体で一歩踏み込んだ取り組みを進めるべき時に来ていると言えそうだ。

 

オーストラリアが教育旅行先に選ばれる10の理由

 

1.  安心・安全 :     治安・衛生・医療に安心感

政治体制が安定しているオーストラリアは、先進国でトップクラスの治安の良さを誇る。水道水の飲料はもちろん、食事や宿泊施設などの衛生管理も整っており、主要都市では日本語が通じる病院もある。

2.  アクセス:  日本から主要都市へ直行便

日本とオーストラリア間は、主要都市間のフライトが充実。最も近いケアンズは約7時間、シドニーでも約9時間のフライトで、夜便を利用すれば、翌日の午前中からすぐに活動することができる。

3. 時差:  時差ボケなしで無駄なく行動

日本の南に位置するオーストラリアはほとんど時差がない。東部が+1時間、西部が-1時間で、夏時間でも最大時差は2時間。そのため体調に無理のない旅程を組むことができ、有意義に行動できる。

4. 気候:  広大な国にさまざまな気候帯

南半球に位置するオーストラリアは、日本と季節が反対で、地域によって気候帯が異なる。北部は1~3月に雨季となるが、熱帯雨林の景観が鮮やか。南部の主要都市は温暖で、1年を通じて快適だ。

5. 多民族: 多民族・異文化を肌で実感

さまざまな民族が共存するオーストラリア。人種の異なる人々が互いの文化を理解・尊重している様は、学生にとって大いに刺激的だ。今後の国際社会を担う学生にとって、グローバルな視野を養える。

6. 英語圏:  交流を通じ学習意欲を刺激 

異民族同士の会話が多いことから、英語が分かりやく、非英語圏の人たちに対する態度も寛容的。学校訪問やファームステイなどの交流を通して生きた英会話を実践でき、学習意欲向上も期待できる。

7. 学習素材:  独自の素材を多彩にアレンジ

独自の進化を遂げたオーストラリアでは、他国では見られない大自然や固有の動植物と触れ合える。先住民アボリジナルピープルの歴史や文化も興味深い。福祉の現状や企業訪問等のテーマ設定も可能だ。

8. 世界遺産:ユニークな世界遺産で体験学習を 

オーストラリアは、複合遺産を含む自然遺産の数が世最多。世界最大級の一枚岩や珊瑚礁、熱帯雨林、奇岩群などがあり、いずれもアクティビティを通じて体験的かつ探究的な学習機会を得られる。

9. ハード:  受け入れ施設に豊富な選択肢

教育旅行先として人気の都市がいくつもあり、どの都市も宿泊施設が充実。エコノミーからラグジュアリーまで、予算やグループの規模に応じて選べる。ファームステイや研修センターなども需要が高い。

10. ホスピタリティ:本物の交流を体験 

オーストラリアとは国家間の関係が良好で、オーストラリア人には親日家も多い。日本人や日本語に対する関心も高く、交流も深めやすい。学校訪問やファームステイなど最良の機会を設けられる。

 

次のページ「学校研修実施レポート」