グアム政府観光局(GVB)秋葉祐輔エクゼクティブ・ディレクターインタビュー
ファミリー層へのアプローチをさらに強化
グアムのファンを増やし本格的な回復へ
新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類相当へと移行したことで、日本人旅行者がグアムに戻り戻ってきたことを実感しつつあった2023年。そして、2024年に入って円安が進行する中で、海外旅行需要に対する新たな挑戦が求められる年となった。このような環境の中で、グアム政府観光局(GVB)日本オフィスはどのように日本マーケットの拡大を図っていくのか。秋葉祐輔エグゼクティブ・ディレクターに話をうかがった。
逆風の中では健闘のFY24
前年比は良好で回復基調
グアムへの日本人訪問者数を見ると、10月から始まるグアムの会計年度(FY)では、今年度(FY24)は前年実績を大きく上回っている。例えば昨年5月以降との比較では、今年5月が95.0%増の1万2034人、6月も362.0%増の1万1245人と大幅に増加。7月も1万5000人を超える見込みだ。伸び率は鈍いものの、5類相当移行後で前年実績を下回った月はなく、回復基調にあるのは間違いない。そういった視点で見ると、外的要因による強い逆風が吹いている中でも、米ドル圏のグアムは健闘しているといってよいだろう。秋葉氏はこの要因について「近さと相対的な割安感、安心・安全なアメリカンリゾートであることが認知されているため」と見ている。
一方で、円安が大きなマイナス要因となり、グアムだけでなく海外旅行そのものを回避する傾向が顕著になったため、日本の海外旅行需要は2019年の実績にはまだまだ及ばないというのも現実だ。GVB日本オフィスも、このマイナス要因を理由に現状でよしとしているわけではない。コロナ後すぐにグアムを訪れたのは、資金と時間に余裕がある層と若年層だったが、さらに旅行者数を増やすため、直近でグアムを訪れてくれる層をターゲットとしてテコ入れする。
ファミリー層のさらなる拡大と
新たな需要の掘り起こしに本腰
GVB日本オフィスがテコ入れを図るためのターゲットに設定したのがファミリー層だ。ファミリー層は夏休みや春休みに子供連れでグアムを訪れるケースが多く、2023年8月の好調を支えた層だった。さらなる上積みのためにも、これまでもメインターゲットであり続けてきたファミリー層へのアピールをさらに強化する。ファミリー層向けには、すでに専用ウェブサイト「こどもとグアム」を開設してキャンペーンを実施。このキャンペーンは9月末で終了するが、同サイトでは今後も継続してファミリー向けのアピールを行っていく。このサイトに登場するグアムの鳥「ココバード」のペーパークラフト貯金箱も作成し、秋以降の子供向けイベントなどで配布してグアムをアピールすることも検討している。
今後について秋葉氏は、「まだアイデアレベルだが」と前置きしたうえで、「ファミリー層向けの広告予算を厚くし、直接的に購買にまでつながるような道筋を付けた広告にしていく方法を検討している」と、ファミリー層のさらなる拡大に向けて意欲を見せている。
さらにウェディングやゴルフ、そして教育旅行において、新たな需要の掘り起こしにも着手する。
コロナ前には多くの挙式カップルがグアムで結婚式を行っており、ウェディングはグアムの強みの1つだった。2023年には、他のリゾート地に比べても順調に回復が進んでいることから、ホテルやブライダルプロデュース会社などからGVBにプロモーションを強化する要望が寄せられているという。日本からの距離や料金など、グアムはもともとリゾートウェディングにおいて競合優位性がある。ウェディングで訪問するカップル1組につき平均9人の列席者が訪れるというデータもあり、現地での消費額も少なくない。
ゴルフについても現地の関連事業者の期待度が高いという点ではウェディングと同様であり、「旅行会社や航空会社を含めた関連事業者をGVB日本オフィスが取りまとめて、ウェディングやゴルフで来島する方々をオールグアムで歓迎している、という総合的なプロモーションを行う役割を担っていきたい」(秋葉氏)としている。
団体旅行のサポートプログラムも継続する。FY24でGVBのサポートプログラムを利用してグアムを訪れた団体の合計人数が約1万人にのぼったことから、GVB本局も団体旅行を重視。FY25以降も同程度かそれ以上の規模でサポートプログラムを提供していく見込みだ。
教育旅行についても学校関係者からの問い合わせが増加しているうえ、旅行会社の担当者からもコンペで勝てるサポートを要望する声が寄せられている。GVB日本オフィスは今後、2年先を見据えた教育旅行関連の予算の使い方について本局と折衝を重ねていくという。団体旅行と教育旅行のサポートプログラムの内容は、FY25の予算が確定し次第、固めていく。
GVBがFY24で実施した「GO! GO!GUAM PAY」も継続する予定だ。これは全国旅行支援の「region PAY」を海外で利用できるようにしたもので、実施当初はさまざまな課題も見られた。しかし継続してきたことで認知度が高まると、旅行会社の販売促進、現地企業の収益増、旅行者の特典と、3者にメリットがあることが理解されつつある。秋葉氏は「デジタル決済にプロモーションを絡めた形にできれば理想的」と話しており、今後も現地の参加企業を増やしたり、航空券のみを購入してグアムを訪れる人も対象にできるかどうかを議論したり、さまざまな調整を行ってより使いやすく発展させていく考えだ。
日本航空のデイリー運航を歓迎
チャーター需要の掘り起こしも
グアムへの旅行者数を増やすためには、航空座席数の増加は必要不可欠な要素となる。そのような状況で、日本航空が10月27日から成田—グアム線をデイリー運航に増便するというニュースは、グアムにとって非常に明るい話題だ。また、羽田経由でのグアム旅行についても全国でアピールを続けていく。
一部の旅行会社がFY24でチャーター便を利用した商品を販売したが、FY25ではチャーター便の活用についても広く呼びかけていく構えだ。コロナ後は全世界的に機材が足りないとされてきたが、「世界的な旅行需要が落ち着きを見せ始めた今は、余剰機材があるとの話も耳にする」(秋葉氏)ため、地方空港発着も視野に入れながら、余剰機材を活用したチャーター便の可能性も探っていく。
過去・現在・未来にわたる
幅広いグアムファンにアプローチ
姉妹都市交流も拡大している。GVB日本オフィスのスタッフが姉妹都市の自治体を訪れて、中高生をはじめ若年層の相互交流拡大に関する企画を説明するなどの活動を活発化。すでに日本の中学生とグアムの中学生をオンラインでつないで授業を実施した例もあり、秋葉氏は「将来のグアムファンを作るためには、こういった地道な草の根レベルでの活動も重要」として今後も注力する考えだ。
GVB日本オフィスは着実な回復の手応えを感じているが、コロナ後に「従来型のグアムファン」による「大好きなグアムにやっと戻って来た」という内容のSNSの投稿が増えていることにも注目している。秋葉氏は「かつて100万人デスティネーションだった頃のグアムを知る人たちが戻ってきてくれている」と、グアムファンの多さと幅広さをあらためて実感。現在のメインターゲットに加え、過去・現在・未来にわたる多様な層へのアプローチを重視していく。