共同プロモーションで「ヨーロッパ完全復活」へ ヨーロッパ観光委員会(ETC)と日本旅行業協会(JATA)
ヨーロッパの観光局で構成するヨーロッパ観光委員会(ETC)日本支部と、日本旅行業協会(JATA)のアウトバウンド促進協議会(JOTC)欧州部会は、共同プロモーションを開始すると発表した。「ツーリズムEXPOジャパン2024」(9月26~29日)への参加や、食文化を切り口とした「美味しいヨーロッパ Gastronomy Journey」プロジェクト、さらにETC日本支部で初となる研修旅行(FAM)など、各種施策を展開していく。「ヨーロッパの完全復活」へ向け、タッグを組む両者の動きを紹介したい。
「ツーリズムEXPOジャパン2024」に20カ国出展
ETCトップ来日、基調パネルディスカッションに参加
今年の「ツーリズムEXPOジャパン2024」には、ETC加盟20カ国がブースを出展。なかでも今年で3回目となるETCによる共同ブース「ヨーロッパパビリオン」は、16コマでの出展と過去最大となる。業界日には商談会とネットワーキングイベントを実施するほか、一般日にはスタンプラリーやクイズショーなどの一般消費者向けイベントも計画する。
また昨年に引き続きETC本部のあるベルギーのブリュッセルより、エグゼクティブディレクター・CEOのエドゥアルド・サンタンデール氏が来日、9月26日にはツーリズムEXPOジャパンの基調パネルディスカッションに参加する予定となっている。
「美味しいヨーロッパ Gastronomy Journey」で食文化の多様性を訴求
11 月に発表、オーバーツーリズム解消にも期待
「美味しいヨーロッパ Gastronomy Journey」プロジェクトは、豊かな食文化の多様性をテーマに、観光局おすすめの名物料理を紹介する取り組み。単なる料理の紹介にとどまらず、その土地の伝統やストーリーを紹介して、デスティネーションの魅力をアピールする。
JOTC欧州部会とETC日本支部メンバー国が料理を厳選し、11月に発表する予定。選出した料理を取り入れたツアーを会員各社が造成し、ヨーロッパ旅行商品の販売促進を図る。ロゴも新たに作成した。
同プロジェクトは、2019年にJOTC欧州部会主導で展開したキャンペーンだったが、新たにグレードアップして展開するもの。特に名物料理を旬の時期に周辺の観光地と一緒に楽しむ旅を提案することで、人気観光地を避けた新しいデスティネーションを開発、同時にオーバーツーリズム解消につなげることも可能となる。
今回のプロジェクトの狙いについて、ETC日本支部委員長の沼田晃一氏(フィンランド政府観光局日本支局代表)は、「海外に行きたいと思っていただけるためには、旅の魅力の伝え方をさらに変えていかなければならない。ヨーロッパへの渡航が以前よりも長くかかってしまうことから、より深い体験、インスピレーションを感じて頂けるプロモーション展開が重要。持続可能な販売促進を推進していく為には、業界が一丸となって取り組める新しい枠組みが求められている。2025年はその第一歩。我々自身がワクワクする、そんな仕掛けを旅行業界の皆さんと一緒に作っていきたい」と述べ、キャンペーンの意義を強調した。
「ツーリズムEXPOジャパン2024」で一般日に
スタンプラリーとクイズを開催
ETCとETC加盟の各国政府観光局のブースでは、9月28日と29日の一般入場日にヨーロッパ各国の魅力を楽しく体験できるための「ヨーロッパを巡ろう!スタンプラリー」を実施した。ETCブース「ヨーロッパパビリオン」及び各国政府観光局の独立ブースを巡ってもらうために企画するもので、専用パスポート(写真/9月28日と29日にETCブース「ヨーロッパパビリオン」で各日先着1500名に配布)に10種類以上のスタンプを集めると、各国政府観光局が提供するグッズをプレゼントした。
またETCブース「ヨーロッパパビリオン」では、スマホを使った来場者参加型のクイズ大会も実施。成績上位者にはヨーロッパ各国観光局による素敵な賞品をプレゼントした。
9月にフィンランドとフランスの合同FAM実施
「新しい形の共同プロモーション」他方面にも
一方、FAMは「ETC合同研修旅行」として、9月6~13日に実施。フィンランドの湖水地方とフランスのブルターニュ地方を中心に周遊する旅程で、フィンランド政府観光局とフランス観光開発機構、フィンエアーが協力。JOTC欧州部会は募集と参加者の選出を担当し、JOTCメンバーよりランドオペレーター2社、旅行会社4社、計6社(東京:4社、大阪:2社)のスタッフが参加した。
今回のFAM実施の背景について、フランス観光開発機構日本代表のジャン=クリストフ・アラン氏は、「フランスならフランス、フィンランドならフィンランドと、それぞれの国のプロモーションを行うことが一番重要な目的ではあるが、コロナ禍を経て、新しい時代に沿った新しい形で共同プロモーションを行うことも非常に重要であり、求められている」と説明。
また、ETC沼田氏は「今回の合同FAMは初めての試みで、構想から実施まで2年かかった。
ETC本部、JATA/JOTC、各国の観光局およびDMO、フィンエアーが一丸となって協力して取り組んだ壮大なスケールのプロジェクト。必ず成功させて、持続可能な新たなスキームに仕上げて行きたい」と強調。今後の他方面への展開にも意欲を見せた。
意見交換会やBtoB商談会も予定
旅行会社主催イベントでのセミナーも
他にもJOTC欧州部会とETCによる意見交換会や、コロナ前に旅行会社向けに実施していたワークショップ(商談会)を12月5日に実施する予定だ。
また「BtoBtoC」として、旅行会社主催イベントにも積極的に参加していく考え。ETC沼田氏は「旅行会社とタッグを組んで渡航需要を刺激するということで、JOTCメンバーである旅行会社の皆さまには、ETCをひとつのコンテンツとして考えて頂き、エンターテイメント性を高めて頂きたい」と説明。
内容については、「従来のデスティネーションごとの紹介ではなく、テーマ別に、例えばお城、クリスマス、ワイン、夏の風物詩など、『お国自慢』を通して豊かな多様性を比較することで、参加者の好奇心を刺激させる、そのような企画を提案している」と語った。
BtoC 展開としては、「美味しいヨーロッパ」のウェブサイトを製作するなど、販売促進イベントと連動して、デジタル需要も訴求していく。
若年層の新規需要開拓
日本市場の存在意義を高める取り組みも
今回の共同キャンペーンの意義について、フランス観光開発機構アラン氏は、「リピーターへの新しい提案だけでなく、新しい客層、若年層にもリーチしていかなければならない。その意味でもJATAとETCの連携は非常に大切だ」と指摘。
またETC沼田氏は、「業界とのパートナーシップをさらに強化しながら、ヨーロッパ市場に日本のマーケットをアピールするというのも大きな目的」と強調。こうした取り組みは、ETC本部でも評価が高まっているとのことで、「これだけ業界との足並みを揃えた例は、他にはないということで、日本がベンチマークになりつつある」(フランス観光開発機構アラン氏)とのことだ。
ヨーロッパ観光委員会(ETC) エグゼクティブディレクター・CEO
エドゥアルド・サンタンデール氏
日本市場は長い間、欧州への海外旅行者の重要な供給源であった。COVID-19パンデミック以前は、日本は欧州への出国旅行市場で第5位にランクされていた。しかし、パンデミックの影響とウクライナで進行中の紛争により、日本の消費者は海外旅行の再開に慎重になっている。
こうした課題にもかかわらず、欧州の観光地は引き続き日本市場を重視し、日本人観光客の訪問に備えて熱心に準備を進めている。今年の「ツーリズムEXPOジャパン2024」の「ヨーロッパパビリオン」は過去最大規模となり、ヨーロッパ観光委員会(ETC)の18のメンバーおよびパートナーの代表が参加し、特にキプロス、モンテネグロ、トルコなど、現在日本に事務所がない新しいデスティネーションを紹介し、日本人旅行者に新鮮な旅の機会を提供できることを楽しみにしている。
ツーリズムEXPOでの取り組みや日本でのプロモーション活動だけでなく、日本のパートナーとの協力関係も深めている。日本旅行業協会(JATA)との新たな覚書(MoU)の締結を発表できることを嬉しく思う。この覚書は、持続可能で責任ある観光の推進におけるベストプラクティスの共有と共同努力の強化に焦点を当てている。このパートナーシップを通じ、私たちは日欧双方において、より環境や社会に配慮した旅行習慣を育み、観光産業の長期的な成功と持続可能性を確保することを約束する。