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2024.11.11

日米観光交流年に合わせ日本での活動を強化【ブランドUSA】

日本人選手の活躍によるMLB人気など、プラス要因もあり、日本人訪米者の今後のさらなる需要回復が期待されている。そんな中、2023年11月に日米両政府において2024年を「日米観光交流年*」にすることで同意。現在、日米各自治体間の姉妹提携をはじめとする双方向による交流拡大を目指したさまざまな取り組みが進む。アメリカ合衆国の公式観光促進団体であるブランドUSAは、日米観光交流年に合わせて日本での活動を強化しており、アメリカへの旅行需要の本格的な回復を目指す。ここでは、アメリカへの旅行需要の現状やブランドUSAの日本市場での取り組みについて紹介したい。
*日米観光交流年は2024年1月1日から2025年3月31日まで

 

 

日本マーケットの現状

日本は重要なマーケット
国別で英国に次ぐ第2位の地位回復へ

 

 日本からアメリカへの訪問者数は、コロナ前の2019年で約370万人。アメリカにとって、隣国のカナダとメキシコを除き、国別で英国に次ぐ2位となっていた。米国商務省国際貿易局のデータによると、今年1~5月の訪米日本人は前年同期比52%の増加。アメリカ本土への旅行者数を見ると、2023年はコロナ前の2019年の55%まで回復している。
 ブランドUSA主催のミッションで来日したグローバル・トレード・ディベロップメント・ディレクター(アジア太平洋地区)のスージー・シェパード氏は、「日本人にとってアメリカは韓国に次ぐ第2位の海外旅行先であり、ロングホールにおいては第1位。一方で日本からの訪米者数は依然としてトップ10に入っており、日本市場が我々にとって重要であることに変わりはない」と述べ、日本市場の重要性を強調する。

 

日本マーケットの回復が不可欠
ハワイやミクロネシアの回復も必要

 

 米商務省は、コロナ後のマーケット回復を目指すべく、「2027年の年間外国人訪米者数9000万人、消費額2790億ドルの達成」を目標とした旅行観光戦略を2022年に発表している。ミッションに併せて来日した米国商務省旅行観光担当副次官補のアレックス・ラズリー氏は「9000万人は2026年に前倒しで達成できると見ている。そのためには日本マーケットの回復が不可欠」との姿勢を示す。
 一方、コロナ後の日本マーケットの傾向について、「コロナ前は、日本人訪米者の42%がハワイ、39%がアメリカ本土を訪れていたが、現在その比率がハワイ36%、アメリカ本土55%と、その割合が大きく変化している」(シェパード氏)と説明。「アメリカ本土の回復はもちろんだが、ハワイやミクロネシア(グアム・サイパン)の回復も必要」とのスタンスを見せた。

 

 

 

ブランドUSAジャパンセールスミッション2024

セールスミッション、2都市開催で32団体が参加
「日本市場への信頼と関心の高さの表れ」

「ブランドUSAジャパンセールスミッション2024」の様子(東京会場)

 

 ブランドUSAにとって、日本市場へ向けた大きな活動のひとつとなったのが7月に開催した「ブランドUSAジャパンセールスミッション2024」だ。今年は初めて1週間の期間を設け、東京に加え大阪も訪問。現地より観光局やサプライヤーなど32団体が来日し、過去最高だった去年の36団体に次ぐ規模での開催となった。期間中は、旅行会社向けの商談会やセミナー、ネットワーキングイベントなどを実施した。 

「ブランドUSAジャパンセールスミッション2024」の様子(東京会場)

 

GEP面接会を並行実施
今年末までの正式導入を予定

 

 また今回のミッションでは、新たに「グローバル・エントリー・プログラム(GEP)」の面接会が並行して行われた。
 GEPは、事前審査を完了した旅行者が所定の空港で入国する際に専用優先レーンの利用ができる事前入国審査プログラム。入国審査の列に並ぶことなく、自動キオスクを利用することで、指紋認証のみで税関申告まで完了する。グローバルエントリーの承認取得後は、GEPの一環としてTSA Pre✓®の資格を得ることができる。TSAプレチェックは、空港での手続きをスムーズにするために導入された、迅速なセキュリティチェックのためのプログラムで、条件を満たし、TSA(米国運輸保安局)によって選ばれた対象者は、専用のスクリーニングレーンに案内され、靴やジャケット、ベルトを外したり、荷物からノートパソコンを取り出す必要がないため、大幅な時間短縮が期待できる。
 GEPは取得後5年間有効で、登録申請の際に100ドル(2024年10月より120ドル)が必要。既に米国市民やグリーンカード(永住権)保持者のほか、現在20カ国/地域を対象に導入されているが、日本については今年末までの正式導入を予定している。
 ミッションに合わせて来日したGEPを管轄する米国国土安全保障省税関・国境取締局(CBP)トラステッド・トラベラー・プログラムズ課長補佐のクリスティーナ・ルナ氏は、「テクノロジーを駆使したプログラム。安全性を維持しながらスムーズな入国を実現した」と説明。今後は積極的な告知を行う考えを示し、「アメリカ渡航の多いビジネスマンだけでなく、リピーターのレジャートラベラーにも提案したい」と意欲を見せた。 

ミッションに合わせて来日した面々(左からブランドUSAグローバル・トレード・ディベロップメント・ディレクター(アジア太平洋地区)のスージー・シェパード氏、米国商務省旅行観光担当副次官補のアレックス・ラズリー氏、米国国土安全保障省税関・国境取締局(CBP)トラステッド・トラベラー・プログラムズ課長補佐のクリスティーナ・ルナ氏)

 

MLBプロモーション

MLBの特別番組に協力
「MLB観戦+α」を提案、多彩なツアー造成を

 ブランドUSAは、セールスミッションに加え、スポーツテレビ局「J SPORTS」の特別番組「MLBイッキ見!スペシャルボールパークへ行こう」の制作に協力。前半と後半それぞれ1時間の番組で、ロサンゼルスやサンディエゴ、シカゴ、ニューヨーク、ボストンの各球場を訪問、MLB観戦だけでなく、各地の旅の楽しみ方も紹介する。本年、9月末まで定期的に再放送を行う予定だ。
 MLB人気について、ブランドUSA日本事務所は、大谷翔平選手のような日本人トッププレーヤーを擁するメジャーリーグの人気は、日本人にとってアメリカを訪れる強い動機となっている、と説明。今回の特別番組に加え、JTBが日本におけるMLB公式旅行代理店スポンサーとなるなど、動きが活発なことから、MLB観戦ツアーを促進する機会と捉えている。

 

共同プロモーション

旅行業界パートナーと組んだ
共同プロモーションを積極的に展開

 

 ブランドUSAは、旅行業界パートナーとの共同プロモーションを積極的に展開している。現地体験型アクティビティ専門予約サイト『ベルトラ』を運営するベルトラ株式会社と共に、多彩なアメリカの魅力を伝える共同プロモーション「Explore America」を展開。
 同キャンペーンは、ブランドUSAが昨年実施したアメリカ旅行の販促アイデアコンテスト「ゴールド・ラッシュ:ブランドUSAマーケティング・チャレンジ」において、ベルトラ社が企業部門グランプリを受賞したキャンペーン案を実現化したものだ。
 ベルトラ社の公式サイト内の特設セクション「Explore America」にて、日本に姉妹都市関係を有するアメリカ9都市の魅力を紹介しつつ、同社が販売する9都市内の現地ツアーやアクティビティを訴求する内容となっている。全3回にわたって展開する同プロモーションでは、ロサンゼルス、ヒューストン、ボストン、ホノルル、ニューオリンズ、マイアミ、シアトル、ニューヨーク、シカゴを本年4月から一年間にわたって順に紹介する。

ベルトラとの共同プロモーション「Explore America」。現在は第2弾を展開中
www.veltra.com/jp/special/north-america/usa/explore-america/

 

 その他、観光地や宿泊施設のおすすめ情報を提供する旅行情報サイト「RETRIP」を運営する株式会社RETRIPと共に、さまざまなアメリカの観光地を多彩なテーマに沿って紹介する特集記事を制作。これまでにポートランド、ロサンゼルス、シカゴを特集。この秋には、デンバー、ニューオリンズ、シアトルの特集ページも公開予定だ。

 

 

ブランドUSAの販促ツール

トリッププランナーや画像/動画ライブラリーなど、商品造成に有用な販促ツール

ブランドUSA トラベルトレードウェブサイト
traveltrade.gousa.jp

 

トリッププランナー(上)やメディアバレット(画像/動画ライブラリー、要登録/下)など提供

 

ブランドUSAでは定期的に実施しているセールスミッションやセミナー・ワークショップ、キャンペーンを通じて日本の旅行会社に対し、主要なゲートウェイ以遠の旅行先を含むより多彩なツアー商品の開発を促す取り組みを続けている。販促ツールとして、旅行業界向けウェブサイトにあるツールキットや、トリッププランナーといったオンラインサポートを提供している。

地方都市でのセミナーも実施
旅行業界向けFAMツアーも実施

 

アメリカの公式観光ガイド「Go USAガイド」

デジタル版のダウンロードはこちらから

その他取り組み

現地法人とオペレーターとのマッチングも
デジタル広告で一般消費者に訴求

 

 また「日本の旅行会社の現地法人と在米オペレーターをつなぐプラットフォーム」(シェパード氏)として、マッチングイベントを現地法人の多いニューヨークで実施。今後は同じく現地法人が集まるロサンゼルスでの開催も予定している。
 他にも、今年4~6月には、一般消費者向けのグローバルキャンペーン「すべて体験しよう」を、デジタル広告を中心に展開。今年後半にも同様のキャンペーンを計画する。またオンライン旅行会社(OTA)や旅行会社と組んだプロモーションも順次展開していく。
 また、本年7月15日付けにて、ブランドUSAの新社長兼最高経営責任者(CEO)に、フレッド・ディクソン氏(写真)が就任し、ブランドUSAは新体制の下、次の成長段階に向けた準備を推進することとなる。観光業界における30年以上の経験を持つ同氏は、今後ブランドUSAを牽引し、デスティネーション・マーケティング組織の世界的なリーダーとしての地位を強化する態勢を整えている。

 

 

 

 

ツーリズムEXPOジャパン2024

今年はアメリカ方面から37団体出展
日米観光交流年シンポジウムも開催

 

 今年9月に開催したツーリズムEXPOジャパン2024には、アメリカ方面から37の団体が出展した。

参加団体

1. カリフォルニア観光局
2. ロサンゼルス観光局
3. ヨセミテ・マリポサ観光局
4. グレーター・パームスプリングス観光局
5. ワシントン州観光局
6. シアトル観光局
7. ポートランド観光協会
8. シカゴ観光局
9. ミシシッピ・リバー・カントリーUSA
10. ディスカバーニューイングランド
11. グレーター・マイアミ観光局
12. デルタ航空
13. ハーツレンタカー
14. スポーツ・トラベル・アンド・ツアーズ
15. ハワイ州観光局
16. アウラニ・ディズニー・リゾート&スパ コオリナ・ハワイ
17. シルク・ドゥ・ソレイユ アウアナ
18. ハレクラニ
19. ヒルトンハワイ
20. ハイアット セントリック ワイキキビーチ
21. ハイアット リゾーツ ハワイ
22. イルカ ハワイ
23. カ・ライ・ワイキキビーチ、LXRホテルズ&リゾーツ
24. クアロア・ランチ・ハワイ
25. アウトリガー・リゾーツ&ホテルズ
26. ポリネシンアカルチャーセンター
27. プリンスリゾーツハワイ
28. タチバナエンタープライズ
29. ザ・カハラ・ホテル&リゾート
30. ザ・リッツ・カールトン・レジデンスワイキキビーチ
31. ワイキキ・コレクション- マリオット・リゾーツ・ワイキキ
32. ワイカイ・サーフ & ウォーターアドベンチャー
33. ウエットアンドワイルドハワイ
34. グアム政府観光局
35. マリアナ政府観光局
36. The Visa Waiver Program Powered by ESTA
37. ビジットUSAコミッティ ジャパン

 

日米観光交流年シンポジウム

 2024年5月にロサンゼルスで行われた第1回に続き、「ツーリズムEXPOジャパン2024」の開催に合わせ、第2回目のシンポジウムを開催。アメリカを代表するツーリズム・サプライヤーが参加し、日本からの渡航需要の回復を早期に達成すべく、日本からの渡航需要の回復のスピードを早めるために実施している施策および今後のプランについて、パネルディスカッションが行われた。

ロサンゼルスで開催された第1回シンポジウムの様子。
日米の政府関係者、観光関係の団体、企業などの関係者が集まり、日米双方向の観光促進について意見交換が行われた

開催日時 ● 9月27日(金) 16:45-18:00
主催 ● 日米観光交流年ワーキンググループ
(観光庁、在日米国大使館、ブランド USA、 一般社団法人 日本旅行業協会、
日本政府観光局)
登壇者●
▪ディズニー・ディスティネーション インターナショナル
▪ハワイ・ツーリズム・オーソリティ  ▪ポートランド観光協会
▪グレーター・マイアミ観光局 ▪(モデレーター)ブランドUSA

登壇者の4名。左からハワイ・ツーリズム・オーソリティ ナーホオビイ氏、ポートランド観光協会アンダーソン氏、グレーター・マイアミ観光局ドカル氏、ディズニーのランゲヴェルド氏

 

 

 

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