ハワイ州観光局 日本支局①
短期、中長期戦略の「二刀流」で
着実な需要回復、拡大を目指す
ハワイ州観光局、2025年に向けた取り組み
コロナ後、円安や物価高の影響を受けながらも、ハワイへの旅行需要は確実に回復している。その流れを確固たるものとし、さらに拡大するためには、明確なターゲット設定と、それに基づく効果的な施策が必要となる。またそれを進める上で、旅行会社や航空会社、現地ホテルやアトラクションなど、日本に限らず現地ハワイのサプライヤーとの連携は不可欠だ。ハワイ州観光局 日本支局(HTJ)は、こうした状況を踏まえ、直近の旅行予約を促すための短期戦略と、将来を見据えた中長期戦略の「二刀流」で、着実な需要回復とその先の需要拡大を目指していく方針だ。2025年に向けた観光局の施策について、HTJ局長のミツエ・ヴァーレイ氏に話を伺った。
■短期戦略
業界とのコラボレーションを重視
“付加価値の提供” で予約増狙う
まず、2025年に向けた施策について、ヴァーレイ氏は「短期のさまざまな施策と中長期の施策を分け、意識してプランニングを立てている」と説明。そのなかで、短期戦略については、「ブッキングペースを上げていくには、ハワイにたくさんリソースを投下して頂いている企業さんとのコラボレーションなしではまず難しい」として、業界とのコラボレーションを重視する姿勢を見せる。
旅行会社やOTA、航空会社、現地ホテルやアトラクション、またクレジットカード会社など、各業界パートナーは、それぞれハワイ市場へ向けた戦略や施策を進めている。HTJではそれをきちんと理解した上で、予約増加に向けた適切なサポートを行い、業界とのコラボレーションを推進する。
こうしたコラボレーションを進めていく上で、特に重視するのが“付加価値の提供”。「単なるディスカウントキャンペーンではなく、付加価値を提供することで、ハワイ旅行をより魅力的なものにし、良いタイミングにキャンペーンを実施してハワイ旅行の予約へとつなげていきたい」と強調する。
また、こうしたコラボレーションを積み重ね、継続していくことも重要。「リカバリーは、一夜でできるものではない。斬新なキャンペーンを展開するというよりかは、予約促進につながる付加価値の提供と販促プロモーションを、どのタイミングで、誰と、どう打っていくか戦略を立て、その結果を見て分析して、しっかりと回していくことを来年も続けていきたい」と述べ、今後の取り組みへの意欲を示した。
■中長期戦略
【ファミリー】
ファミリー層をターゲットに
「やっぱりハワイ」を展開
一方、中長期戦略のひとつとして、今後力を入れていくのがファミリー層の取り込み。ヴァーレイ氏は、「中長期でしっかりとファーストタイマー、ファミリー層の取り込みに注力したい」と説明する。具体的には、現在展開しているプロモーション「旅、はじめるなら やっぱりハワイ」の一環として、ファミリー層への訴求を図る。
「やっぱりハワイ」は、コロナ後の需要喚起を目的に、2023年秋にスタートしたプロモーション。即効性の高い「親孝行」「ロマンス」をキーワードに、ハワイ旅行を訴求する内容で、今後はそれに「ファミリー」が加わる。まずは業界パートナーで活用してもらえるような動画や写真、ソーシャルメディアを意識したショート動画など、「使える素材、コンテンツを年内にかけて撮影する」とのことだ。
パートナーのニーズに合わせた
オーダーメイドのサポート
具体的なプロモーション内容だが、短期戦略と同様、共通のキャンペーンではなく、各業界パートナーのターゲットに合わせたサポート、いわばオーダーメイドの支援をしていく方針だ。「業界パートナー各社のニーズに合った、役立つ素材をクリアに伝えていくこと、お互いのニーズを把握し、それを伝えることがとても大切になる」と指摘する。
例えば、旅行会社においても、それがパッケージ向けの施策なのか、またFIT向けの施策なのか、また旅行会社でもオンライン旅行会社のプロモーション施策など、それぞれターゲットやニーズが異なってくる。航空会社、現地ホテルやアトラクションにおいても同様。パッケージに朝食クーポンや空港送迎を付けたり、オンライン旅行会社や航空会社であれば、ポイントまたはマイルキャンペーンを展開するなど、その内容はさまざまだ。
日本と現地をつなぐ役割も
複数社参加でより大きな効果
観光局として、個々の内容に合わせたオーダーメイドのサポートや価値の提供だけではなく、「お互いにターゲットやニーズが一致した日本の旅行会社と現地側サプライヤーを、観光局がつないで、よりプロモーションを実りあるものにしていくこと」も重視しており、いわばコーディネーターとしての役割にも力を入れる。また、「1社だけでなく、2~3社で同時期にキャンペーンを提案する」ことも。キャンペーンに合わせ、HTJやメディアと絡めた展開で相乗効果を高め、よりキャンペーン効果を最大化させる取り組みも進めている。
業界パートナーに限らず、メディア対応においても、個々のメディアの特徴やーズ、ターゲットに合わせたサポートを行っていく方針。広告キャンペーンについても、「昔はマスメディア向けに、コマーシャルを製作していたが、今はターゲットによってソーシャルメディアであったり、インフルエンサーへの施策だったり、新聞やラジオ、テレビ、それぞれ視聴者や読者にリーチできるプラットフォームが大きく変わっている」とのことで、より効果的な展開を進めていく。
■中長期戦略
【各島のリブランディング】
各島のイメージをきちんと訴求
若年層など将来のリピーター醸成へ
また、より先を見据えた中長期戦略として、来年以降本腰を入れるのが「各島のリブランディング」。ヴァーレイ氏は、「新しいハワイのファン層として、若年層を意識していかなければならない。ハワイの典型的なブランドイメージを刷新していく必要がある」と訴える。
一般的に日本におけるハワイのイメージは、未だホノルルやワイキキで止まっていることが多いのが現状。「イベントで各島のパンフレットを用意したら、ハワイ島からなくなっていく。ハワイ島にワイキキがあると思われている。それはハワイと書いているから。そのくらい各島のブランディングが浸透していない」と指摘する。
各島のリブランディングは、「Beautiful Hawaiʻi(ビューティフルハワイ)」キャンペーンの一環として進めていく。同キャンペーンは、ハワイの島々の特徴や本質的なハワイの魅力を伝えることを目的に昨年より展開しているものだ。特にリブランディングにおいては、「各島へ行くきっかけ作りにしたい」考え。また「それぞれの島で体験できることを、しっかりと各島の観光局と一緒に打ち出していくことで、ハワイの幅が広がり、もっとイメージを変えていきたい」という。
一般消費者をメインに訴求
旅行会社もサポート
各島のリブランディングは、一般消費者へ向けたBtoCプロモーションを主軸に据える。特にメディアと協力しながら、「各島での過ごし方、島ごとの違い」をしっかりと打ち出していくことで、一般消費者への露出を増やしていく。若年層を意識したデジタルマーケティングも進める。旅行会社に対しても、リブランディングを明示していく。「業界パートナーの方でも、島のパッケージ化に意欲のあるところに対
してはしっかりとサポートしていく」とのことだ。
■ジャパンサミット、HAWA‘I I EXPO
ジャパンサミットや「HAWAI‘I EXPO」など来年も継続
ハワイ関連イベントへのサポートも
これまで実施してきた旅行会社向けの「ジャパンサミット」や、一般消費
者向けの「HAWAIʻI EXPO(ハワイエキスポ)」といったイベントも、来年は「短・中長期のリカバリー施策と各島のリブランディングをテーマに形を変え
て続けていく」(ヴァーレイ氏)とのこと。ジャパンサミットは2025年の4月、
またHAWAIʻI EXPOは2025年5月の開催を検討している。
ジャパンサミットは、日本の旅行会社スタッフをハワイに招へい、基調講演のほか、現地でサプライヤーとの商談の場を設けている。「ジャパンサミットは大きな結果を生み出している。何よりも、日本の旅行会社の皆様にはハワイを見て体験して頂くことが大切。何年もハワイに来られていない、また行っことがないという方々が多いなか、まずは体験してもらい、そこで現地の方とコミュニケーションして頂く場となる」と、イベントの重要性、意義を指摘する。
また、現地ハワイのサプライヤーにとっても、ジャパンサミットは意義のあるイベントだ。「ハワイの場合は、中小企業も多く、特にニッチなサービスやこれから新しいプロダクト開発を進めている企業は、なかなか日本を含むアジアマーケットへ行くことができない。そうした企業にジャパンサミットに来て頂き、体験し商談して頂くこともすごく大切なこと」と強調する。
HAWAIʻI EXPOについても、「ハワイに興味のある方々や潜在意識の高い方々と、業界パートナーの方々をつなぐイベント」として、来年は「サプライズで違ったコラボレーションができれば」と意気込みを見せる。
一般消費者向けイベントでは、他のハワイ関連イベントへの後援も引き続き強化していく方針。「実際にハワイを感じたい、ハワイの情報を得たい、というニーズが高い。BtoCイベントはとても大切なので、しっかりと観光局の活動に活かしていきたい」とのことだ。
■アロハプログラム
FAMや店舗へのサポートを継続
現地専門家の日本巡業も検討
公式ラーニングサイト「アロハプログラム」では、旅行業界向けのスペシャリストプログラムと、一般消費者向けの展開の2つがあり、旅行業界向けにおいては、スタッフへの教育に加え、特にハワイの旅行商品を実際に販売する店舗へ向けたアプローチとして重視している。また、スペシャリストプログラムの上級獲得者がトレーナーとなって、他のスタッフへの教育を行う「トレーナープログラム」も展開。スペシャリスト向けのFAMやウェビナーや店舗へのサポートも継続していく。
一般消費者向けの取り組みとしては、ハワイ文化に詳しい現地ハワイで活躍するハワイ文化専門家を日本に招く「カルチャーブリッツ」の実施を検討する。ヴァーレイ氏は、「来年はターゲットを全国に広げ、北海道から九州、沖縄まで訪問してコミュニティを作っていくことで、ハワイファンを増やしていきたい。何年か続けていくことで、ファンがハワイの魅力を伝えるために地元で活動してもらえるようなアンバサダープログラムのようなものもできればと期待している」と述べ、今後への展開に期待を示した。