ハワイ州観光局 日本支局②
■MCIと教育旅行
CSRへのニーズ高まる団体旅行
教員視察で文科省とタッグ
MCI(ミーティング、カンファレンス、インセンティブ)については、専門組織「Meet Hawaiʻi(ミートハワイ)」と連携しながら引き続き誘致強化に努める。特にハワイならではの取り組みとして、インセンティブに向けたCSR(企業の社会的責任)に関する情報提供や素材の提案に力を入れる。
ハワイ州観光局では、リジェネラティブ・ツーリズムの理念に基づき、「マラマハワイ」をスローガンに掲げてハワイの文化や伝統、自然環境を持続、再生させる活動を推進している。この「マラマハワイ」の一環として、ビーチクリーニングといった社会貢献活動を提案しており、「ただイベントをするだけでなく、何かしら現地のためになることをやりたいというニーズに応えることができる。今年も6000名以上の報奨旅行が入っており、そうした方々は必ず現地で何かしらのCSR活動を行って頂いている」(ヴァーレイ氏)という。
教育旅行の誘致も重要施策のひとつ。「ハワイでどんなことが学べるのか、どんな素材があるのかということを、いろいろな形で提案、強化していきたい」方針。今年7月下旬には、教員向け視察を実施。これは、文部科学省が展開する官民協働の海外留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」との共催事業として実現したもの。「【高校等教員向け】探究型海外研修企画のためのハワイ視察プロジェクト」の第一弾として実施したものだ。好評を受け、12月には第2弾を予定している(教員向け視察について詳しくは後述)。また双方向交流に基づいた日本とハワイの自治体間の姉妹提携に基づいた交流活性化も教育旅行の誘致において重要な取り組みとなる(姉妹提携について詳しくは後述)。
広い意味での教育旅行を提案
「学びの宝庫」ハワイの訴求も
観光局としては、ハワイでは修学旅行に限らず、さまざまなタイプの教育旅行が組める点をアピールしていきたい考え。「業界の中では、『教育旅行=修学旅行』のイメージがまだまだ根強く残っている。ハワイは教育旅行において、幅広い内容を提供できる強みがある。高校の修学旅行は数の上では主流となっているが、今では小学校の文化交流から大学のゼミまで、さまざまな形態の教育旅行がある。英語留学や夏休み期間中の子どもの留学、アクティブシニアの短期の習い事など、広い意味での教育旅行をもっとブランディングしていきたい」と語る。
また、「学びの宝庫」ハワイの訴求も重要だ。「ハワイには、大学や研究所、
NPO、民間などの機関が充実しており、学べる素材がたくさんある。平和学習から天文学、海洋学や医療、環境など学べる素材がたくさん揃いながら、さらにインフラも整っているデスティネーションは数少ない。現地に日本の旅行会社のオフィスがあり、日本マーケットへの理解度がある点も大きな強みだ」とアピールする。
特に最近は、探究型学習へのニーズが高い。事前や事後の学習もしっかり行いより教育的効果の高い教育旅行が求められている。前述の教員向け視察旅行においてもこうしたニーズを反映して実施に至った。ハワイはいろいろな教育旅行が組める点、「学びの宝庫」である点において、探究型学習の目的地としてふさわしい点を今後アピールしていく。サイズ的にも「2~300名の修学旅行がある一方で、もっと少人数で内容が濃く、継続できることでリレーションシップが築けるような教育旅行を開発していきたい。ハワイがリーダー的な役割を果たす海外デスティネーションになれると思っている」と強調する。
■メディア施策
観光局プラットフォームの刷新と情報発信の強化
また、「オウンドメディア施策」として、公式ポータルサイト「allhawaii(オールハワイ)」(www.allhawaii.jp)やソーシャルメディアなど、観光局が運営するプラットフォームの刷新と情報提供の強化を図る。ヴァーレイ氏は「各島での体験や楽しみ方、旅のプラン、さまざまな最新情報や安全情報など、観光局として確実な情報を正しく、きちんと発信していくことが大切」と語り、情報発信の重要性を強調する。
またこうした情報発信をのために、「メディアの方々とつながり、もっと拡散していただけるようにしていきたい」とのこと。今後はメディアでのハワイ特集やシリーズといった露出を増やすべく、適切な情報発信に長期的なプランとして取り組んでいく。「マラマハワイ」などの啓発も進めていく考えだ。
メディアの視察旅行を強化
より細かなニーズに対応
メディア戦略においては、視察旅行も重要な取り組みのひとつに位置づける。特に今年はメディアの視察旅行を多く企画。これは円安や物価高の影響で取材経費がかさむことでハワイ取材を見送ったり、安価な近隣諸国に振り替えたりする動きに対応したものだ。
メディアの細かなニーズに合わせた少人数の視察から20名規模の大規模な視察も実施。サステナビリティをテーマにした視察(4月)や、「メイドインハワイ」をテーマにハワイで活躍する日系人を訪ねた視察(5月)、「はじめてのハワイ」と題し、ハワイに来たことがないメディアを対象とした視察も行った(6月)。今後は、ゴルフやマウイ島のサステナビリティ、オアフ島のグルメ、ハワイ島、カウアイ島、ラナイ島の体験といった細かな視察を計画する。
■現地への取り組み、今後の見通し
現地で日本市場の重要性訴える
海外旅行におけるハワイのシェア拡大目指す
現地ハワイのサプライヤーに対して、日本マーケットの重要性を訴えることも観光局の大きな取り組みのひとつ。ヴァーレイ氏は「現状をしっかりと説明することが大切。日本市場のリカバリーは決して落ちてはおらず、少しずつ上がっている。ただ、日本で誘致活動をするだけでなく、現地側において、日本マーケットの可能性や今までの関係性をしっかり説明する役割が観光局にはある」と強調する。
今後の見通しについては、まずは「海外旅行への前向きな感情、旅行意欲を戻していく」ことが先決とのスタンスを示す。「業界一丸となって、海外旅行への気運醸成に取り組まなければならない。そのなかで、ハワイのシェアを
しっかりと取っていきたい」考えだ。
日本発の海外旅行需要は、コロナ前と比べようやく6割回復した段階。円安や物価高の影響もあり、近隣のデスティネーションから需要が回復しており、コロナ前は日本発の海外旅行全体で9%あったハワイのシェアは、現在6%となっている。来年は一連の施策を通じて、「シェアの回復を目指していく」意向だ。
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