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2025.03.26

航空会社レポート(NDC)シンガポール航空

テクノロジーの進化に対応した新しい航空券の流通規格として、IATA(国際航空運送協会)が提唱するNDC(New Distribution Capability)が、日本でもOTAを中心に浸透しつつある。近年、本格運用を開始する航空会社が増え、より多様なプロダクトを提供できるNDCのメリットを活かした流通の構築が求められている。航空会社各社のNDCへの取り組みと最新動向を紹介したい。

シンガポール航空
日本支社長シア・ナムクン氏

NDC導入の背景と現状

 シンガポール航空は、多様化する顧客ニーズに対応し、より柔軟な航空券販売を実現するため、2020年12月にNDCプログラム「KrisConnect」を日本市場で導入した。以来、NDCを活用した流通の拡大に積極的に取り組んでいる。
 KrisConnectでは、従来のGDS経由よりも競争力のある運賃、細かな座席指定、付帯サービスの事前手配、航空券購入に伴う手数料削減など、さまざまなメリットを提供している。
 また、API技術を活用し、旅行会社が直接接続できる仕組みを整えている。現在、以下の方法で接続およびNDCコンテンツの利用が可能である。

 

①システム直接接続(API接続を含む)
② アグリゲーター接続(NDC対応GDSを含む)
③「Agent360」ウェブサイトの利用(NDCコンテンツのみ手配が可能)

「Agent360」 (agent360.singaporeair.com)

 

 

NDCの普及状況

 現在、NDCの普及率を公表していないが、日本での普及率は継続して伸び続けている。取扱量では、今のところOTAが貢献しているが、パートナー数ではOTA以外が多く、取扱量も確実に伸びている状況だ。

 

NDCで提供しているコンテンツ

 公示運賃をはじめ、IT運賃や学生運賃など、ほぼすべての航空券種を取り扱っている。また、事前の座席指定や追加手荷物料金の事前購入など、EDIFACT(GDS接続)では提供できなかった付帯サービスも利用可能だ。
 NDC経由でのみ手配可能なコンテンツも提供している。EDIFACTよりお求めやすい公示運賃や、レジャー、法人向けの特別運賃、さらにEDIFACTでは手配できない座席指定や超過手荷物の付帯サービスも含まれる。付帯サービスの購入も可能だ。

 

NDCのメリットについて

 NDCを活用することで、旅行会社は従来のEDIFACT経由では手配できなかった特別運賃や付帯サービスを提供できる。また、EDIFACTにおける手数料の負担がないため、コスト削減のメリットもある。
 お客様は特定の時点において、自分に最も適した商品やサービスの組み合わせを含むパーソナライズされたオファーをますます期待するようになっている。当社では、旅行者や旅行会社、企業の希望に応じた運賃や条件、割引、付帯商品やサービスの組み合わせを調整できるようにこれらの機能に多額の投資を行っている。

 

NDCをいかに浸透させていくか

 販促のためのインセンティブや、アグリゲーター(含むGDS)と合同のセミナーを開催することで、認知度拡大や訴求を図っていきたい。もちろん、担当営業スタッフによる営業、またBtoBサービスデスクによるサポートといった、NDCを浸透させるためのいわば「草の根」の活動にも注力していく。

 

NDC推進における課題

 デジタルディストリビューションへの対応に長けており、NDCとの親和性が高いOTA以外の旅行会社へのNDCの普及が大きな課題。メリットの認知度向上やインセンティブを打ち出しながら、「NDC導入による品揃えの拡充が競争力向上につながる」ことを理解してもらう必要がある。
 また、NDCコンテンツの充実のためには、システムの継続的な改良が不可欠であり、本社やアグリゲーターとの緊密な連携が求められる。当社では、今後もNDCの強化を通じて、より多様な選択肢を提供していく方針だ。

 

画像提供:シンガポール航空

 

 

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