航空会社レポート(NDC)エールフランス航空/KLMオランダ航空
テクノロジーの進化に対応した新しい航空券の流通規格として、IATA(国際航空運送協会)が提唱するNDC(New Distribution Capability)が、日本でもOTAを中心に浸透しつつある。近年、本格運用を開始する航空会社が増え、より多様なプロダクトを提供できるNDCのメリットを活かした流通の構築が求められている。航空会社各社のNDCへの取り組みと最新動向を紹介したい。
エールフランス航空/KLMオランダ航空
日本・韓国・ニューカレドニア
コマーシャルディレクター
サイモン・クラウトホフ氏
NDC導入の背景と現状
2018年より、旅行会社のセグメントごとにNDC対応を進めており、特にフランスとオランダを含む欧州市場ではすでにNDCが確立されている。
まず、技術に精通し、NDCに対して基本的なニーズを持つオンライン旅行会社(OTA)から導入を開始。現在、NDC経由で発行されるクーポンは全体の9割を占めるまでに移行が進んでいる。
次に、オフラインのレジャー旅行会社のNDC移行に取り組んだ。このセグメントはVFR(Visit Friends and Relatives)運賃、ツアーオペレーター運賃、コンソリデーター運賃など、特有のニーズを持つ。NDCの活用により、エールフランスとKLMの最良のオファーへのアクセスが可能となり、現在「Light運賃」「日本発NDC限定プロモーション運賃」「コンティニュアス・プライシング(無段階運賃)」などがNDC限定で提供されている。
ビジネストラベルのセグメントについては、より複雑なニーズや適応すべき要素が多いため、最近になって本格的な取り組みが始まった。具体的には、企業の予約ツールやミッドオフィスシステム、さらにはサービシング機能全般への対応が求められる。
すでに一部の先行企業はNDCへの移行を大幅に進めているが、グローバル展開や、シンプルな新販売プラットフォームに関する従業員の研修をいかに行うか、といった課題を抱える企業も多い。
NDCの普及状況
NDCの導入は世界的に急速に拡大している。特にヨーロッパでは顕著だが、アジアマーケットにおいては、最近韓国などの市場でもNDCの利用が増えている。
NDCで提供しているコンテンツ
●コンティニュアス・プライシングによる、さらに多くの魅力的な価格設定
●最安値のレジャー運賃およびNDC専用プロモーション
●ディストリビューション手数料免除による数十ユーロの節約
●予約時から発券時までの価格保証
●払い戻し猶予期間:支払い後24時間以内の航空券および有料オプションの完全払い戻し
(初回発券分のみ)
●SAF(持続可能な航空燃料)促進協賛費、有料座席指定などの革新的なオファー:
航空券と追加オプションが1回の取引で利用可能になったパーソナライズされたダイナミックパッケージ
●ラウンジ利用の追加オプション
●長距離路線ビジネスクラス機内食の事前選択 (通常メニューのみ)
NDCを活用することで、旅行会社や法人顧客は多くの特典を享受できる。
NDCの提供方法
現在、22の異なるアグリゲーター(GDSおよび非GDS)とNDC接続を行っている。これにより、旅行会社パートナーは、ニーズに応じ、希望のアグリゲーターを通じてNDCに接続することができる。
エールフランスとKLMのすべてのNDC機能をアグリゲーターに提供している。アグリゲーターはこれらの製品や特定の料金、機能を実装するかどうかを判断し、その恩恵を顧客に提供している。
NDCのメリットについて
NDCにより、クライアントはエールフランスおよびKLMの最良のオファーを享受することができる。それに加えて、NDCを通じて複数の専用特典を提供している。
エールフランスおよびKLMのNDCソリューションとその関連利点は、ニュースレターやセミナー、ワークショップを通じて定期的にパートナーと共有している。さらに、ビジネスパートナー向けにNDCの利点とメリットを一覧表示するオンラインプラットフォーム「ビジネスソリューション」を提供している。

NDCをいかに浸透させていくか
日本市場では、いくつかのポジティブな兆候が見られるものの、まだNDCの完全な利用には至っていない。理由として、まず日系航空会社がNDCへの移行を発表しているものの、まだ初期段階にあることが挙げられる。
次に、航空券の販売経路がいまだオンラインよりも対面販売の方が多く、特定の販売インターフェースの変更が必要であり(例:コマンド入力による黒い画面から誰でも操作が可能なGUIをベースとしたグラフィック画面への移行)、それには時間がかかる。これら課題がすべてクリアとなり、日本市場においてNDCがより多く利用され、この新しい流通規格の恩恵を受けることを確信している。
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